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「相続税」がある国・ない国は“半々”
直接税のうち、所得税と法人税はタックスヘイブンを除けばほとんどの国で導入されています。しかし相続税については国ごとに対応が分かれ、課税する国と課税しない国がほぼ半々という状況です。
これは富裕層にとって、国際的な資産移動や租税回避の余地を広げる要因ともなっています。
相続税制度は民法上の親族法・相続法と密接に関わると同時に、その国の歴史や経済政策とも深く結びついています。なぜある国には相続税が存在し、別の国にはないのか。その背景を理解するには、税制史をひも解く必要があります。ここではまず、制度の有無を軸に各国の現状を概観します。
アジア・大洋州…導入検討も、相続税がない中国・インド
アジアでは、中国(世界第2位の経済規模)やインド(同5位)に相続税が存在しません。香港やシンガポールといったタックスヘイブン、さらにはオーストラリアやニュージーランドも同様です。中国とインドでは導入を検討した経緯はあるものの、実施には至りませんでした。
将来的に再び議論が高まる可能性はありますが、もし導入されれば富裕層の移住先や資産移転に大きな影響を与えるでしょう。カナダやオーストラリア、日本などが候補として挙げられるものの、相続税がないのはオーストラリアに限られます。
香港は2006年、シンガポールは2008年に相続税を廃止しました。ただし両国とも不動産移転には印紙税が課されています。
相続税率を大幅に引き下げた台湾
台湾は「遺産課税方式」を採用していますが、2009年の改正で遺産税・贈与税の最高税率を50%から一律10%へと引き下げました。高税率が資産形成を阻害するとの批判に応えたもので、香港やシンガポールの制度廃止も影響したとみられます。
その後の改正により、現在は遺産総額1,200万元以下が免税。5,000万元以下は10%、1億元以下は15%、1億元超は20%と累進的に課税されます。
新たに制度を導入したタイ
他国が相続税を廃止するなか、タイは2016年に相続税と贈与税を導入しました。基礎控除が高く、課税対象は1億バーツ(約4億円)を超える財産に限定されています。税率は原則10%、直系親族への相続は5%です。
対象となる財産は不動産、株式、預金、登録車両など。人的控除は設けられていませんが、税率の軽減によって配慮しています。納税義務者はタイ国民、永住外国人、タイ国内財産を相続する外国人、一定の法人などに広がります。
