(※写真はイメージです/PIXTA)

父、もしくは母の一方に先立たれ、ひとり暮らしとなった親。心配ではありますが、小さな変化にすぐさま気が付くことは難しいかもしれません。本記事では安田真奈美さん(仮名)の事例とともに、老後の後半戦に待ち構えるリスクについて、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

都内の高級タワマンでひとり暮らしをする母

安田真奈美さん(仮名/55歳)は都内に暮らす会社員です。子供たちも独立し、真奈美さんと同様にごく普通の会社員の夫と2人で生活しています。

 

安田さんの母、好美さん(仮名/85歳)は、都内の高級タワーマンション在住です。母の住まいは亡き父が母に遺したもので、父が亡くなったあとはひとりで住んでいます。両親は資産家というほどでもありませんが、父が遅咲きながら事業で成功したため、懐には余裕があります。

 

毎月1~2回は母の様子を見に行くようにしたのですが、あるときから母は「今日は〇〇へ出かけるから」など、なにかと理由を付けて、真奈美さんが訪問しようとしたときに不在ということが多くなりました。会うことがあっても外食したいというので、母のマンションに行くことがなくなってきたのです。しかし、たまたまタイミングが合わないだけかとあまり気にしないでいました。

 

しかし、母のマンションを訪れなくなってから1年が経ったころ、ふとした会話を機に母の異変に気が付きます。

 

同じ話を繰り返しするようになったり、同じマンションの人が自分のことを常に監視しているというようになるなど、被害妄想と思われる発言が増えたり……。

 

ほかにも気になった点が。身だしなみがあまりできていないのです。母はもともとおしゃれが大好きな人で、父から贈られた美しい宝石をネックレスと指輪、ブレスレット、イヤリングでいつもお揃いになるよう付けていました。しかしこのごろは、違うブランドのものを組み合わせたり、服と合っていなかったり。また、靴下の色まで気を遣うタイプでしたが、左右で違うものを履いていることもありました。化粧もそこそこになった母は、以前と雰囲気が変わっていたのです。

 

そして、なんとなく自宅に招くことを拒んでいたことと結びつき、「絶対に来ないで」という母の制止を押し切って、強行突破で母のマンションの一室へやってきました。

 

そこで目にした光景に、真奈美さんは目を疑います。高級マンションの一室とは思えぬほどのゴミ屋敷状態となっていたのです。

 

何ヵ月も貯めたと思われるゴミ袋が床を敷き詰め、床は足の踏み場がない状況。冷蔵庫のなかには腐ってドロドロに溶けたようなものが入っていました。リビングは何日分かわからない食べたあとのものが片付けられておらず、ひどい悪臭がしました。昔、よく自慢していたブランドのバッグや服、アクセサリーが大切に仕舞われていた部屋も、服が散乱し、イヤリングやネックレスがそこら中に転がっています。こんなひどいところで母は毎日過ごしていたのかと、真奈美さんはショックを隠せません。

 

好美さんが安田さんを自宅に招き入れたくなかった理由は、こんな部屋の状態を見せたくなかったからだったのでした。

 

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