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外国人社員の日本での課税ポイント
米国法人に所属する社員が日本の子会社等で3年程度勤務する場合、税務上、日本で課税されるケースが一般的です。これは、通常の就労ビザが3年であり、更新によって最長6年になると所得税法上の居住者区分が「非永住者」から「永住者」に変わることに起因します。
「永住者」となると、日本では全世界所得が課税対象となるため、税制上不利になることがあります。このため、3年間の日本勤務を終えた後は、他国勤務へ切り替えるケースが多く見られます。
ここでは、このような日本勤務の米国人社員に対する給与所得の課税方法について整理します。
外国親会社から給与が支払われる場合
外国人社員が日本で生活している場合、給与が海外の銀行口座に振り込まれていても、生活費を日本国内で使用する必要があります。このため、資金の引き出しは「国外送金」と見なされることがありますが、本稿では送金に伴う課税は考慮しません。
給与が全額国外で支払われる場合、日本での源泉徴収は行われません。しかし、給与所得の「源泉地」は役務の提供地で判断されます。たとえば、1年間を通して日本で勤務している場合、その給与はすべて国内源泉所得に該当します。この場合、源泉徴収が行われていなくても、確定申告により納税する必要があります。
日本子会社から給与が支払われる場合
給与が日本子会社から支払われる場合、この給与は「国内払い給与」となります。しかし、出張等で国外勤務を行った部分の給与は「国外源泉所得」として扱われます。
非永住者の場合、課税対象となる所得は以下の通りです。
国内源泉所得
国外源泉所得のうち、日本国内で支払われたもの、または国外から日本に送金されたもの
この規定に基づけば、給与がすべて国内で支払われている限り、たとえ国外勤務に対応する部分が「国外源泉所得」であっても、日本国内において支払われているため、結果的に全額が日本で課税対象となります。
したがって、国外勤務分が国外源泉所得に該当するからといって、課税対象から除外することはできません。
課税方法としては源泉徴収による年末調整が基本ですが、年間給与が2,000万円を超える場合には確定申告が必要です。
国外出張分の現地課税
外国人社員が国外に出張した場合、滞在国でも「所得の源泉」があると判断される場合があります。たとえば、年間勤務日数の4分の1をB国で過ごした場合、その給与の4分の1がB国源泉所得となります。
ここでポイントとなるのが、日本とB国の間に租税条約があるかどうかです。多くの租税条約には「183日ルール」があり、短期滞在者の課税を免除する規定があります。通常183日以内の滞在であれば、現地で課税されない可能性があります。
上記の例でA社員がB国に約90日滞在した場合、日数的には183日未満であるため、日本とB国の間に租税条約があれば現地課税は免除される可能性があります。ただし、条約が締結されていない場合、B国の国内法に基づき課税される可能性があります。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
