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UAEの成り立ち
アラブ首長国連邦(UAE)は、7つの首長国から成る連邦国家です。主要な首長国であるアブダビは石油資源が豊富で、国家予算の多くを負担しています。1892年に英国の保護領となりましたが、1971年12月にアブダビ、ドバイ、シャールジャ、アジュマーン、ウンム・アル=カイワイン、フジャイラの6首長国が連邦を形成して独立しました。1972年にはラアス・アル=ハイマが加わり、現在の7首長国による連邦国家が完成しています。
人口は約900万人で、首都はアブダビですが、最大の都市はドバイです。
世界有数の産油国UAEの経済
UAEは世界有数の産油国ですが、石油の産出は主にアブダビに集中しています。一方、ドバイは石油資源が乏しいものの、海外企業の誘致に積極的で、約6,000社の企業が拠点を置き、経済をけん引しています。
2010年のOPEC発表による石油埋蔵量では、従来1位であったサウジアラビアを抜き、ベネズエラが1位となりました。これは新規発見ではなく、ベネズエラの重質油が新たに加算されたことによるものです。その結果、石油埋蔵量のランキングは、ベネズエラ、サウジアラビア、カナダ、イラン、イラク、クウェート、UAEの順となっています。
主要貿易国は、輸出が日本、インド、イラン、タイで、輸入がインド、中国、米国、ドイツです。ドバイは高層ビル群で知られますが、経済の主導権は石油資源を持つアブダビが握っています。
UAEの税制の現状
UAEの連邦政府は税制を制定していません。実質的にはアブダビが財政収入の大部分を負担しています。各首長国は、石油や天然ガスの掘削を行う外国企業と個別に協定を結び、一定額を納付させる仕組みです。そのため、石油関連企業や金融業以外は、長らくタックスヘイブン的な状態でした。
2023年6月より法人税が導入され、税率は9%となっています。湾岸協力会議(GCC)加盟国では内国民待遇として課税されません。UAEは世界40ヵ国以上と租税条約を締結しており、日本との租税条約は2013年署名、2014年発効です。
ドバイショックとその影響
ドバイは石油資源に乏しいため、ビジネスセンター構想に基づき大規模な不動産投資を通じて経済発展を目指してきました。
しかし、2009年11月25日、政府系投資会社の不動産子会社が債務返済の一時凍結を要請し、信用不安が生じました。この事件は「ドバイショック」と呼ばれ、当時の日系企業の債権は約6,600億円と報じられました。最終的にはアブダビなどの支援により解消されました。
ドバイは租税条約を利用した国際的な投資の拠点としても機能しています。石油資金の投資に加え、中東以外の国との租税条約を活用したタックスプランニングも行われています。
経済規模と産油力の比較
中東産油国は1981年に設立された湾岸協力会議(GCC)のサウジアラビア、UAE、クウェート、オマーン、カタール、バーレーンが中心です。GCC加盟を希望する国にはイラクとイエメンがあり、イランは独自路線を歩んでいます。
2024年のGDPランキング(世界)は以下の通りです。
サウジアラビア:19位
UAE:29位
カタール:56位
クウェート:59位
オマーン:72位
バーレーン:97位
イラク:51位
イラン:37位
石油産出量の世界ランキングは以下の通りです。
サウジアラビア:3位
UAE:9位
クウェート:10位
カタール:15位
オマーン:21位
バーレーン:62位
イラン:5位
イラク:6位
人口規模と課税制度の関係
GCC諸国(UAE、サウジアラビア、クウェート、オマーン、カタール、バーレーン)には所得税は存在しません。一方、イラン(人口8,920万人)とイラク(人口4,550万人)は自国民に課税しています。これは人口規模に応じた財政上の必要性が背景にあると考えられます。
法人税は以下の通りです。
サウジアラビア:20%
クウェート:15%
カタール:10%
オマーン:15%
UAE:9%(2023年導入)
バーレーン:石油会社のみ課税
イランとイラクでは、法人税率はそれぞれ25%(イラン)、15%(イラク)で、石油・ガス会社にはより高い税率が適用されます。
UAEの今後
アブダビは首都かつ主要産油地域ですが、ドバイは石油依存から脱却し、中東最大の経済都市として発展しています。人口は300万人を超え、法人税率は9%、所得税なしのタックスヘイブンです。さらに、UAEは世界各国と各種193の条約を締結しています。今後、中東・アフリカ市場に事業を展開する際、ドバイはの重要な拠点になると考えられます。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
