「世界の成長エンジン」インド経済の現在地…急成長の裏に潜む“複雑税制”とウクライナ戦争の影で迫る“エネルギー依存リスク”【国際税務の専門家が解説】

「世界の成長エンジン」インド経済の現在地…急成長の裏に潜む“複雑税制”とウクライナ戦争の影で迫る“エネルギー依存リスク”【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

人口世界一の大国・インド。6〜8%の高成長を続ける一方で、貧富の格差や複雑な税制といった課題も抱えています。日本企業の進出も拡大していますが、賃金上昇や国際情勢のリスクは無視できません。はたして「世界の成長エンジン」はどこへ向かうのでしょうか。8月に『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』を刊行した矢内一好氏が解説します。

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世界最大の人口大国

インドの人口は14億3,807万人(2023年、世界銀行資料)。中国を抜き、世界最大の人口大国となりました。人口構成はピラミッド型で、労働力人口の増加が続く点が最大の強みです。

 

一人っ子政策で将来的な高齢化が避けられない中国と比べ、インドは長期的に労働力や消費市場の規模拡大が見込める「人口ボーナス期」が続くと見られています。

 

経済成長率も堅調で、2023年の実質GDP成長率は6〜8%。中国が不動産不況によって経済停滞に直面するなか、インドは「世界の成長エンジン」としての期待を集めています。ただし、一人当たりGDPは依然として世界平均を下回り、貧富の格差やインフラ整備の遅れといった課題も残されています。

外資の投資先としての存在感

2023年の対内直接投資(国別)は次の通りです。

 

1位 シンガポール(117億ドル)
2位 モーリシャス(79億ドル)
3位 米国(49億ドル)
4位 オランダ(49億ドル)
5位 日本(31億ドル)
6位 UAE(29億ドル)
7位 英国(12億ドル)
8位 カタール(9億ドル)
9位 キプロス(8億ドル)
10位 カナダ(5億ドル)

 

モーリシャスが前年の3位から2位に上昇。これはインドとの租税条約を活用した投資の増加によるものとされます。逆に、前年ランクインしていたケイマン諸島は姿を消しました。背後にある中国企業や、ロシア関連の資金が影響しているとの見方もあります。

 

一方、インドに進出する日系企業も着実に増えています。外務省の調査によると、2023年時点の日系企業拠点数は4,957。過去2年で100社が新たに参入しました。その6割は中小企業で、製造業からサービス業まで幅広い分野に広がっています。

 

ただし、賃金は毎年10%前後の伸びを見せ、都市部を中心に事業コストは上昇傾向。インドを単に「低コスト拠点」と捉えた投資は、かえって採算を悪化させるリスクも指摘されています。
 

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