「世界の成長エンジン」インド経済の現在地…急成長の裏に潜む“複雑税制”とウクライナ戦争の影で迫る“エネルギー依存リスク”【国際税務の専門家が解説】

「世界の成長エンジン」インド経済の現在地…急成長の裏に潜む“複雑税制”とウクライナ戦争の影で迫る“エネルギー依存リスク”【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

人口世界一の大国・インド。6〜8%の高成長を続ける一方で、貧富の格差や複雑な税制といった課題も抱えています。日本企業の進出も拡大していますが、賃金上昇や国際情勢のリスクは無視できません。はたして「世界の成長エンジン」はどこへ向かうのでしょうか。8月に『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』を刊行した矢内一好氏が解説します。

国際政治リスク…エネルギー依存の試練

地政学リスクも看過できません。2025年7月、トランプ米大統領は「ロシアがウクライナ和平交渉に応じなければ、ロシア産石油・ガスを購入する国に対して100%の二次関税を課す」と表明しました。

 

インドは輸入石油の約35%をロシアに依存しており、もし制裁が発動されればエネルギー政策の転換を迫られる可能性があります。代替調達や価格高騰への対応など、今後のインド経済にとって大きな試練となるでしょう。

インド税制の複雑さ

インドの税制は中央政府と州政府に分かれ、複雑さで知られています。特に法人税は規模や所得に応じて細かく設定されています。

 

総収入40億ルピー超・課税所得1億ルピー超の場合:実効税率34.94%

外国法人:従来40% → 2024〜2025年度予算案で35%に引き下げ

ミニマム代替税(MAT):会計上の利益の15%が基準。課税所得1億ルピー超では実効税率17.47%

 

こうした多重的な課税方式は企業にとって予測しづらく、進出のハードルとなっています。

 

このため、2025年2月には「所得税法案」が国会に提出されました。成立すれば2026年4月から施行され、条文の簡素化や定義の明確化が進められる見込みです。これにより、企業にとっての税務コンプライアンスの負担が軽減されることが期待されています。

二重課税問題の原点

国際的な二重課税の問題が初めて表面化したのは、実はインドが1860年に所得税を導入したときでした。イギリス居住者が本国とインドの双方で課税される事態となり、これが後に「外国税額控除」制度の発展につながりました。現在各国の租税条約で定められている「みなし外国税額控除」も、その発祥はイギリスとされています。

期待とリスクが交錯する巨大市場

人口増加と高成長率に支えられ、インドは「世界経済の次なる主役」と目されています。一方で、インフラ不足や格差、複雑な税制、地政学リスクといった課題も無視できません。

 

日本企業にとっては、製造・IT・消費市場のいずれも大きな魅力を持つ市場ですが、「低コスト」という従来の発想から脱却し、長期的な視点で戦略を描くことが重要になっています。
 

 

矢内一好

国際課税研究所首席研究員

 

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