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アメリカの税収構造…個人所得税に極端な依存
主要国の税収を比較すると、日本は「直接税:間接税=66:34」、アメリカは「79:21」。欧州諸国(英国・ドイツ・フランス)はほぼ1:1とバランスが取れています。アメリカの特徴は、個人所得税が法人税の約7倍にものぼる点です。
背景には「法人独立納税主体説」があります。法人と株主を切り離して課税する仕組みで、法人税と配当所得の二重課税を調整しません。そのため、一定規模の事業ではパートナーシップ形態を取り、法人段階ではなく個人段階で課税されます。結果として法人税収は少なく、個人所得税に依存する構造となっているのです。
アメリカに付加価値税を導入したらどうなる?
直接税中心だと景気変動が税収に直結します。そのため「安定財源として付加価値税(VAT)を導入すべきでは」との声は昔からあります。
VATは、商品の生産や流通、販売の各段階で生まれる「付加価値」に対して課税する税金です。最終的な負担者は消費者ですが、事業者が取引ごとに仕入税額と売上税額を差し引いて納税する仕組みになっています。欧州連合(EU)をはじめ多くの国で導入されており、標準税率は20%前後が一般的です。日本の「消費税」もこの付加価値税の一種とされています。
アメリカでVATを導入する大きな壁となるのが「州税の売上税(Sales Tax)」です。アメリカでは多くの州で商品購入時に課税され、州の主要な財源になっています。
売上税が存在しないのはモンタナ、オレゴン、ニューハンプシャー、デラウェアの4州。アラスカも基本的に非課税ですが、一部都市では導入されています。もし連邦政府がVATを導入すれば、州の売上税収が連邦に吸い上げられる形になり、州の財政基盤を脅かすことになります。結果として、議会では強い反対が予想されるのです。
