築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
なぜ「終わり」を考えるのか?中古アパート経営を終える理由
高齢化や健康不安で物件管理を負担に感じるようになった、という声は非常に多く聞かれます。築年数が経過するほど修繕の手間も増え、緊急対応や家賃滞納対応なども精神的・体力的に厳しくなるものです。
また、将来の相続を見据えて、早めに財産整理をしておきたいという方も増えています。「子どもに引き継がせるのが正解なのか」「いっそ現金化して相続財産をわけやすくしておいたほうがよいのではないか」といった悩みは、多くの方から共有されています。
さらには、空室リスクや人口減少の影響が大きい地方エリアの物件から、より需要の見込める都市部への買い替えを希望する声も。資産を流動化して事業資金や教育費、老後資金に活用したいという意向もよく見受けられます。
このように、出口を考える理由はさまざまですが、共通して大事なのは「なぜ“いま”その判断をするのか?」という自問です。焦りや感情ではなく、戦略的な判断が後悔を防ぎます。
選べる出口戦略と、それぞれの法的注意点
中古アパート経営を終える方法にはいくつかの選択肢があり、それぞれに法律・税務の論点が存在します。以下、それぞれの方法と注意点を簡潔に整理しておきます。
(1)売却
最も多く選ばれるのが「売却」です。
契約トラブルのリスク:売却時には契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)に注意が必要です。たとえば、買主に対して老朽化した配管や隠れた雨漏りを説明していなかった場合、契約後に損害賠償請求を受けることがあります。
仲介会社との関係:媒介契約の種類(専任・一般)や解約条件などを事前に確認しましょう。
税務リスク:譲渡所得税や住民税など、手取り金額を大きく左右するコストが発生します。長期譲渡か短期譲渡かでも税率が異なるため、税理士への相談をお勧めします。
(2)贈与
親族などにアパートを譲る場合は、贈与という手続きになります。
贈与契約の書面整備:口約束は法的トラブルのもとです。必ず書面に残しましょう。
税金負担:贈与税の基礎控除を超える場合には高額な贈与税が課され、不動産取得税や登録免許税も発生します。
登記:受贈者(もらう側)の意思確認が必要であり、登記義務も伴います。
(3)相続
将来的な相続を見据える場合は、遺産分割や登記義務化のルールに注意が必要です。
遺産分割協議:複数の相続人がいる場合、分割協議が整わない限り、物件の売却はできません。
相続登記の義務化(2024年4月施行):義務違反には過料も。早期の登記対応が求められます。
相続税の申告・納税:不動産の評価額や債務控除、特例の適用可否を含めた検討が重要です。
(4)法人譲渡・持株会社化
個人保有のアパートを法人へ譲渡する方法もあります。法人税・消費税の課税対象になる場合があり、専門家との綿密なシミュレーションが不可欠です。
メリット:所得分散や経費処理の柔軟性が求められます。
デメリット:設立・運営コストや出口での課税リスクが発生します。

