38歳独身、あえて「パート」という働き方を選んだ理由
Bさん(38歳)は、自宅から自転車で15分ほどの距離にある小さな会社で、事務職のパートとして働いています。勤務時間は平日の9時から17時まで。月の手取りは約14万円で、ボーナスや昇給はありません。雇用契約は半年ごとの更新制です。
大学卒業後、BさんはIT企業に営業職として就職しました。成果主義の色が濃く、高い目標が課される職場で、残業は日常的。上司が代わってからは、その空気はさらに張り詰めたものになっていきました。
「年々ノルマが重くなって、休日も仕事をするのが当たり前でした。遊ぶ気力もなくて、とにかく“早く辞めたい”という気持ちばかりが募っていきました」
忙しさのあまりお金を使う暇もなく、生活費で残ったお金は投資に回していたといいます。父親が投資経験者だったこともあり、預金に置いておくより効率がいいと助言を受け、主に米国の投資信託を積み立ててきました。
そうした生活を続けるうちに、資産は2,000万円を突破。しかし、心身の消耗は限界に近づいていました。32歳のとき、Bさんは退職を決意します。
「あそこまでよく持ちこたえたと自分でも思います。実際、同期の多くは辞めていましたから」
退職直前、Bさんはマンションから現在のアパートへ引っ越しました。駅から徒歩25分、6畳1K。築年数は古いものの室内はリフォーム済みで、家賃は月5万円。この住まい選びには、はっきりとした理由がありました。
「20代の大半を仕事に奪われた感覚があって……。もう忙殺される生き方はしたくなかった。支出を抑えて、仕事は最低限にしたい。そのためには、一番大きな固定費である住居費を下げるのが一番だと思ったんです」
その後、現在のパートの仕事に就きました。正社員という選択肢は最初から考えなかったといいます。
「収入は正社員時代の半分以下ですが、必ず定時で帰れて、人間関係も最小限。今の働き方は、自分には合っていると思っています」
生活は極めて質素です。できる限りパート収入の範囲内で暮らし、足りない分は資産運用で補う。そうしたスタイルで将来に備えてきました。
「普通の生き方じゃないかもしれません。でも、今はすごく幸せです。この生活がずっと続けばいいなと思っています」
退職から6年。今の暮らしに満足しているBさんですが、ここ1年ほど、その前提が揺らぎ始めました。
