フェラーリF50――世界でわずか349台しか生産されなかった希少モデル。この高級スポーツカーは、単なるステータスシンボルにとどまらず、投資対象としても注目されています。しかし、税務上は「減価償却資産」に該当するのでしょうか。東京地裁・東京高裁の判決は、取得費の算定や譲渡所得の扱いに重要な示唆を与えています。本記事では、希少資産の価格形成要因と税務評価の現実を整理し、投資家が知っておくべきポイントを解説します。
納税者の主張(フェラーリF50の特殊性)
問題となったフェラーリF50は、1995年にフェラーリ社創立50周年を記念して349台限定で製作された記念碑的モデルです。博物館や美術館に展示された経緯もあり、コレクターズアイテムとして特別な地位を占めていました。
発売当初の定価は5,000万円程度でしたが、平成25年以降、オークションで1億円以上の価格で取引されるようになり、希少性や投機的要因による価格上昇がみられました。
このような背景から、納税者は「F50は通常の自動車とは異なり、使用や経年で減価しない資産である」と主張しました。
裁判所の判断
しかし、裁判所は次のように判示し、フェラーリF50も減価償却資産に該当すると結論づけました。
・限定生産で希少性が高く、オークションで新車時価格を上回る取引があるとしても、
① 高性能な自動車としての機能が価格形成要因になっている
② 投機の対象とされているにすぎない
③ 製造から18年後に売却されており、減価要素は否定できない
・「所得税法38条2項の『使用又は期間の経過により減価する資産』に該当する」と判断しました。
つまり、コレクション的価値があっても、車両である以上は減価償却すべきという結論でした。
大阪学院大学法学部 教授
公認会計士・税理士
昭和26年生まれ。京都大学大学院法学研究科(修士課程)修了
【主な職歴】
摂南大学経営情報学部教授
近畿大学法学部教授
大阪学院大学法学部教授(現在)
【著書】
『交際費(第5版)』(平成19年)中央経済社/『入門連結納税制度』(平成11年)財経詳報社/『第7版/事例からみる重加算税の研究』(令和4年)/『(新装版)入門税務訴訟』(平成22年)/『七訂版/租税回避の事例研究』(平成29年)/『マンガでわかる遺産相続』(平成23年)以上、清文社/「やさしくわかる減価償却』(平成12年)日本実業出版社/『対話式相続税増税時代の実務と対策』(平成26年)ぎょうせい他
【その他】
平成9~11年度税理士試験委員
平成19~21年度公認会計士試験委員(「租税法」担当)
在外研究(Visiting Scholar, University of Hawaii William S. Richards on School of Law:2009)
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