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デジタル課税の沿革
租税回避防止の観点から、OECDは2015年に「BEPS包摂的枠組」という会議体を立ち上げ、大手IT企業の課税問題について検討を開始しました。これは、租税回避と利益移転(BEPS)を防止するための国際的課税ルールを策定する取り組みの一環です。
OECDは2018年以降、デジタル課税に関する文書を公表し、パブリックコメントを行いつつ、G20の承認などを通じて各国の意見を集約しました。その成果として、2020年に青写真として「柱Ⅰ」と「柱Ⅱ」を公表しています。
問題点は以下の2点に整理されます。
①大手IT企業が収益を得ている国(以下「市場国」)において、収益に見合った納税をしていないこと。
②先進各国が外国企業誘致のため法人税率を引き下げていること。この動きを抑制し、低税率国を利用した税負担軽減を防止するために、最低税率制度を設ける必要があること。
このうち①が「柱Ⅰ」、②が「柱Ⅱ」に対応します。
「柱Ⅰ」の問題解決策
市場国では、収益に応じた納税をしない大手IT企業に対して「デジタルサービス税(DST)」を課す動きが広がっていました。
OECDは、所得配分の方法として多国間条約(MLC)のモデルルールを2022年に公表し、「包摂的枠組」において承認を得ています。そのため、当初アメリカも異議を唱えないとされていました。
しかし2025年にトランプ大統領が就任すると、MLCへの反対姿勢が鮮明となり、アメリカ上院で条約が承認される見込みはなくなりました。このままでは、欧州を中心とした国々でDSTの課税が継続する状況が続く可能性があります。
さらに、DSTに反対するトランプ大統領が、EUとの「関税15%の約束」を覆し、DSTを課税する国に対して追加関税を課す可能性も指摘されています。
