ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【基本編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
富裕層対策が焦眉
国際機関であるOECDが国際税務において焦眉としている事項は、①所得を得ている市場国における大手IT企業等に対する課税方法、②富裕層に対する租税回避対策――です。
米国は世界最大の富裕層人口を抱えていますが、資産を海外に移転して課税を逃れる事例が多発しています。米国内国歳入庁(IRS)の資料「Tax Havens and Their Use By United States Taxpayers - An Overview(以下「Gレポート」とします)」によれば、1960年代からすでにタックスヘイブンを利用した所得隠蔽に対する税務調査が行われていました。
たとえば1957年および1958年には、IRSマンハッタン署の調査官がニューヨークの銀行からスイスの秘密口座へ預金を移していた事例を発見し、77の仮名で合計110万ドルが預金されていたことが明らかになりました。
また米国郵政省(1971年に独立行政機関の郵政庁に改組)は、1968年1月から5月にかけて、スイス銀行から送られる封書を受け取っていた納税者の封筒を複写し、168名を調査、その結果200万ドルの追徴課税を実施しました。この施策は「スイス発郵便のチェック(Swiss Mail Watch)」と呼ばれ、後に「外国銀行口座解明計画」へと発展しました。
税務行政執行共助条約の出現
税務行政執行共助条約(以下「共助条約」とします)は、OECDと欧州評議会が共同で検討・作成したもので、1986年7月にOECD租税委員会、1987年4月に欧州評議会閣僚会議で条約案が採択されました。その後、同年6月の欧州評議会閣僚会議および10月のOECD理事会において署名のために開放することが合意され、1988年1月25日、OECD加盟国および欧州評議会加盟国に署名が開放されました。
共助条約の主な役割は、①同時税務調査や他国の税務調査への参加を含む情報交換、②保全措置を含む租税債権徴収の協力、③文書送達――です。これにより、国際的な同時税務調査や情報交換が可能となりました。
