(※画像はイメージです/PIXTA)

本記事は、西村あさひが発行する『N&Aニューズレター(2025年7月31日号)』を転載したものです。※本ニューズレターは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法または現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、西村あさひまたは当事務所のクライアントの見解ではありません。

Ⅰ 第三者委員会を含む調査委員会の調査における組織風土・組織文化論(真因分析)と今後の課題

執筆者:木目田 裕

 

(1) 今日では、第三者委員会・社内調査委員会等といった調査委員会の調査では、企業不祥事(官庁その他の組織における不祥事を含みます。以下同じ)の発生・継続について、直接的な原因だけでなく、組織風土・組織文化における問題の所在まで遡った分析を行うことが一般的になっています。

 

既に発生している企業不祥事について、その直接の原因を分析して、再発防止策を構築するだけでは、将来の同種の企業不祥事は防止できるかもしれませんが、異なる類型の企業不祥事の発生まで防止できるとは限りません。企業不祥事の発生・継続をもたらした真の原因(真因)について、組織風土・組織文化にまで遡って分析して手を打つことで、どのような類型の企業不祥事であろうと、将来の企業不祥事の発生を極力防止することが期待できます。

 

このように、組織風土・組織文化論-真因分析と言い換えてもよいです-は、そもそも調査委員会の調査に限らず、コンプライアンスという観点から特に大切なことです。

 

この点、私自身が、2017年10月4日付け日本経済新聞で「不祥事を防ぐ組織風土追求を」と題する小論を執筆したとおりです※1

 

※1 日本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」(2010年12月17日改訂版)も、「第三者委員会の調査対象は、第一次的には不祥事を構成する事実関係であるが、それに止まらず、不祥事の経緯、動機、背景及び類似案件の存否、さらに当該不祥事を生じさせた内部統制、コンプライアンス、ガバナンス上の問題点、企業風土等にも及ぶ。」としています(第1.1.(1))。

 

(2) 企業不祥事における調査委員会等の調査において、この組織風土・組織文化の分析を行う際に課題であるのは、往々にして、分析が、調査委員会等の直感的・主観的な判断になってしまいがちであり、具体的な事実や証拠に基づく分析にならないこともある点です。

 

具体的な事実や証拠に基づく分析の方が、調査委員会等としても、企業や企業経営者の腹の底にまで本当に響くような提言を行うことができると思われます。

 

また、具体的な事実や証拠に基づく分析でないと、組織風土・組織文化や真因の分析といっても、例えば「経営者の強いコミットメントを示す」、「心理的安全性を確保する」等々と、どの調査委員会の調査報告書でも、似たり寄ったりの抽象的なお題目の羅列にしかならなくなる危険もあります。

 

(3)問題は、組織風土・組織文化や真因に関し、いかにして、具体的な事実や証拠に基づいて、更に深く切り込んでいく分析を行っていくか、です。

 

まずは、分析の根拠となる具体的な事実や証拠を調査報告書できちんと指摘することが第一歩です。アンケート結果や、役職員のヒアリング結果などは、有力な証拠になりますが、難しいのは、「Aさん、Bさんによれば、組織文化として、あるいは真因として、こうした点があった」といっても、Aさん、Bさんの捉え方が特異な捉え方(Aさん、Bさんの主観的な思いつきや偏見、独断)に過ぎないかもしれないという点です。

 

他方、仮にアンケートである程度の多数を占める同じ意見があったとしても、企業不祥事が報道され、企業が厳しく批判されているような状況ですと、アンケート回答を歪めるようなファクターがないかどうかの検討も必要になります。集合知という捉え方もあれば、「みんなで渡れば怖くない」でよいのか、という反論もあるでしょう。

 

具体的な事実や証拠を出発点にして、品質管理の現場などで使われる「なぜなぜ分析」※2(「なぜか」を例えば5回繰り返して深掘りしていく手法)などを組み合わせて、分析を客観的・具体的に、できれば外部から検証可能なように深めていく必要があります。これに加えて、コンプライアンスや危機管理に携わる弁護士としては、社会学の分析手法など隣接分野の知見を積極的に学んで取り込んでいく必要もあるのではないかと考えています。

 

※2 余談ですが、「なぜなぜ分析」は、私が検事時代に教わった「取調べや捜査の極意」とされる「立ち小便の理論」(拙稿「事実調査におけるヒアリング手法」弊事務所・本ニューズレター2018年10月号)と同じ考え方だと思います。

 

以上

Ⅱ 最近の危機管理・コンプライアンスに係るトピックについて

執筆者:木目田 裕、宮本 聡、西田 朝輝、澤井 雅登、藤尾 春香

 

危機管理又はコンプライアンスの観点から、重要と思われるトピックを以下のとおり取りまとめましたので、ご参照ください。なお、個別の案件につきましては、当事務所が関与しているものもありますため、一切掲載を控えさせていただいております。

 

【2025年6月4日】

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律が成立

参議院WEBサイト:
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/217/meisai/m217080217050.htm

厚生労働省WEBサイト:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html

 

2025年6月4日、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律が成立しました。主な改正点は以下のとおりです※3

 

※3 以下に挙げたもののほか、職場におけるハラスメント対策に関する啓発活動を行う国の責務の明示などの点が、公布日に施行されております。

 

(1)ハラスメント対策の強化【労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法】

① カスタマーハラスメントを防止するため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務付け、国が指針を示すとともに、カスタマーハラスメントに起因する問題に関する国、事業主、労働者及び顧客等の責務を明確化。

 

なお、カスタマーハラスメントに関して、事業主が講ずべき措置等は以下のとおりであり、具体的な内容等は、今後、国が定める指針において示される予定です。

 

・ 事業主は、顧客等(職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者)の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(以下「顧客等言動」という。)により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

 

・ 事業主は、労働者が相談を行ったこと又は事業主による相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 

・ 事業主は、他の事業主から当該他の事業主が講ずる措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。

 

② 求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務付け、国が指針を示すとともに、求職者等に対するセクシュアルハラスメントに起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務を明確化。

 

なお、求職者等に対するセクシュアルハラスメントに関して、事業主が講ずべき措置等は以下のとおりであり、具体的な内容等は、今後、国が定める指針において示される予定です。

 

・ 事業主は、求職者等によるその求職活動その他求職者等の職業の選択に資する活動(以下「求職活動等」という。)において行われる当該事業主が雇用する労働者による性的な言動により当該求職者等の求職活動等が阻害されることのないよう、当該求職者等からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

 

・ 事業主は、労働者が当該事業主による求職者等からの相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 

(2)女性活躍の推進【女性活躍推進法】

① 常時雇用する労働者の数が101人以上の一般事業主及び特定事業主に対し、男女間賃金差異及び女性管理職比率の情報公表を義務付け。

 

② 女性活躍の推進に関する取組が特に優良な事業主に対する特例認定制度(プラチナえるぼし)の認定要件に、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止に係る措置の内容を公表していることを追加。

 

③ 特定事業主行動計画(特定事業主が実施する女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に関する計画)に係る手続の効率化。

 

(3)治療と仕事の両立支援の推進【労働施策総合推進法】

① 事業主に対し、職場における治療と就業の両立を促進するため必要な措置を講じる努力義務を課すとともに、当該措置の適切・有効な実施を図るための指針の根拠規定を整備。

 

本改正案は、一部の規定を除き、公布の日(2025年6月11日)から起算して1年6月以内で政令で定める日から、本改正案を施行することが予定されています。なお、(2)①③、(3)は、2026年4月1日の施行が予定されています。

 

【2025年6月20日】

公取委、独占禁止法に関するコンプライアンス実態調査の結果及びコンプライアンスガイドの改訂版等を公表

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/jun/250620kigyou_compliance..html

 

公正取引委員会は、2025年6月20日、「企業における独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用状況に関する実態調査及び実効的な独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用のためのガイドの改訂について」を公表しました。

 

本実態調査は、上場企業を対象として実施した、独占禁止法コンプライアンスに関するアンケートやヒアリング調査の結果をまとめたものであり、例えば、以下の点を指摘しています。

 

・ アンケート回答企業の約1割は、独占禁止法コンプライアンスに関する行動規範、基本規程、マニュアルのいずれも策定していないこと。

 

・ アンケート回答企業の約半数は、競争事業者との接触に関する社内ルールを策定していないこと。

 

・ アンケート回答企業の約半数は、独占禁止法違反行為に関する自主申告や社内調査への協力を懲戒処分の減免事由として考慮すると回答しており、そのうち約半数の企業は、当該考慮をする旨を社内規程に明記していること。

 

・ 独占禁止法をテーマとした監査について、メールモニタリングの際にAIを利用している例があること。

 

・ 今回ヒアリング調査を実施した中小企業(経済団体等からの紹介により任意に選定した中小企業7社)においては、いずれも、独占禁止法違反リスクは存在しないか極めて低いと認識されており、独占禁止法に焦点を当てた取組は実施されていなかったこと。

 

また、公正取引委員会は、同実態調査の結果を踏まえ、独占禁止法コンプライアンスガイド※4を改訂しました。本改訂の概要は以下のとおりです。

 

・ 私的独占・不公正な取引方法の未然防止・早期発見等のための取組、独占禁止法に関する監査におけるAIの活用、中小企業における独占禁止法コンプライアンスに関する取組といった記載等の追加。

 

・ 独占禁止法コンプライアンスに関する好取組事例の追加等。

 

・ 社内規程やマニュアル等の策定・作成上のポイントの追加。

 

※4 公正取引委員会が2023年12月に策定した、独占禁止法コンプライアンスプログラムの構成要素や、その意義や本質、留意点等を網羅的・体系的に整理したものです。

 

【2025年6月24日】

証券取引等監視委員会、「金融商品取引法における課徴金事例集~不公正取引編~」を公表

https://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/torichou/20250624.html

 

証券取引等監視委員会は、主に2024年4月から2025年3月までの間に、金融商品取引法違反となる不公正取引に関し勧告を行った事例を取りまとめ、公表しました。本事例集に記載されている2024年度における課徴金勧告事案の主な特徴は以下のとおりです。

 

【インサイダー取引】

・上場会社の役員

・社員から伝達を受けた者によるインサイダー取引を複数勧告

・上場会社の役員が職務上知得した内部情報を悪用し、インサイダー取引を行った事案を勧告

・上場会社との契約締結交渉者やその役職員が内部情報を知得し、知人に対して情報伝達

・取引推奨に及んだ事案を複数勧告

・上場会社との契約締結交渉者やその役職員から伝達を受けた者によるインサイダー取引を複数勧告

 

【相場操縦】

・証券会社が市場デリバティブ取引において、見せ玉手法により相場操縦を行った事案を勧告

 

【風説の流布・偽計等】

・個人が上場会社の株式の相場の変動を図る目的をもって風説を流布し、有価証券の価格に影響を与えた風説の流布事案を初勧告

 

【2025年6月25日】

公正取引委員会、「独占禁止法に関する相談事例集(令和6年度)」を公表

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/jun/250625.html

 

公正取引委員会は、2025年6月25日、「独占禁止法に関する相談事例集(令和6年度)」を公表しました。本相談事例集には、例えば、以下の事例が掲載されています。

 

(1)「家電メーカーが、家電製品の一般消費者への販売に至るまでに生じるリスクと費用を自ら負担することを前提として、取引先事業者に対し、一般消費者への販売価格を指示すること」(問題なし)

 

(2)「医療用医薬品卸売事業者3社と運送事業者1社が協力し、中山間地域等への医療用医薬品の配送を維持するために配送を共同化すること」(問題なし)

 

(3)「事業者数社が、大気中に放出される二酸化炭素の排出量削減を目的とするCCS事業の共同実施に必要となる装置の導入に当たり、当該装置を構成する機器やその稼働に必要な資材を共同で調達すること」(問題なし)

 

(4)「放送事業者5社が、新たに共同で団体を設立し、従来各社で行っていた広告審査業務の一部を当該団体に委託する取組」(問題なし)

 

(5)「メーカー数社が、温室効果ガス排出量削減に向け、パッケージの一部を小型化・軽量化するための共同研究等を実施すること」(問題なし)

 

【2025年6月27日】

金融庁、「マネー・ローンダリング等及び金融犯罪対策の取組と課題(2025年6月)」を公表

https://www.fsa.go.jp/news/r6/20250627/20250627.html

 

金融庁は、2025年6月27日、「マネー・ローンダリング等及び金融犯罪対策の取組と課題(2025年6月)」を公表しました。同発表は、2024年事務年度(2024年7月~2025年6月)を対象に、我が国の金融機関等を取り巻くリスクについて、国際的な規制や政府全体の取組を踏まえた金融機関等のマネロン等対策や、金融犯罪対策を記載するものです。

 

本発表においては、これまでのマネロン等対策に向けた取組として、FATF第5次対日相互審査※5に向けた政府全体の取組などを紹介した上で、今後のマネロン等対策の有効性の確保・高度化に向けた取組として、リスクベース・アプローチに基づく検査やモニタリング、マネロン等対策の有効性検証、「疑わしい取引の参考事例」※6の改訂を行う予定であることが記載されています。

 

※5 FATF(金融活動作業部会)の加盟国が、マネーロンダリング対策の状況を相互評価するものであり、第5次審査は2028年8月に実施される予定です。

 

※6 金融庁等が所感する特定事業者が、犯収法8条第1項に規定する疑わしい取引の届出義務を履行するに当たり、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として特に注意を払うべき取引の類型を例示したものです(https://www.fsa.go.jp/str/jirei/)。

 

また、本発表においては、政府等による以下の対策等も紹介しています。

・ 詐欺的な投資に関する相談窓口の開設や、SNS上の投資詐欺が疑われる広告等に関する情報受付窓口の設置等の、「被害に遭わせないための対策」

 

・ 金融機関による警察への情報提供や連携、金融機関間における不正利用口座情報の共有、ICチップ情報を用いた本人確認の厳格化等の「犯罪者のツールを奪うための対策」

 

・ 政府広報媒体を活用した周知、広報の強化等

 

【2025年6月30日】

証券取引等監視委員会、令和6事務年度版の「開示検査事例集」を公表

https://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/kaiji/20250630.html

 

証券取引等監視委員会は、開示検査事例集を公表しました。令和6事務年度において課徴金納付命令勧告が行われた事案のうち、特徴的なものは以下のとおりです。

 

・ 共同して株主としての議決権を行使することを合意しており、共同保有者に該当する非上場会社2社が、大量保有報告書や変更報告書を提出せず、また、重要な事項につき虚偽の記載があり、記載すべき重要な事項の記載が欠けている変更報告書を提出した事案。共同して株主としての議決権を行使することを合意している者について、それぞれが共同保有者であると認定し、課徴金納付命令を行った初めての事案であるという点に特徴があります。

 

・ (1)株式会社が連結財務諸表に「関連当事者との取引」や「偶発債務(債務保証)」に関する注記を行わず、記載すべき重要な事項の記載が欠けている有価証券報告書及び有価証券届出書を提出し、(2)当該株式会社の連結子会社が、実態のない前渡金の計上による損失の不計上の不適正な会計処理を行ったことにより、当該株式会社が過大な当期純利益を計上した連結財務諸表等を作成し、これらの連結財務諸表等を記載した有価証券報告書及び有価証券届出書を提出した事案。偶発債務の注記の不記載を理由として課徴金納付命令勧告を行った初めての事案であり、また、開示規制違反により過去5年以内に課徴金納付命令を受けた者が、再度開示規制に違反したことにより、通常の課徴金額の1.5倍に相当する額の課徴金納付命令勧告を行った初めての事案であるという点に特徴があります。

 

・ 株式会社が、投資有価証券評価損の不計上等の不適正な会計処理を行ったことにより、重要な事項につき虚偽の記載がある有価証券報告書、四半期報告書及び有価証券届出書を提出した事案。償還時に暗号資産への転換が可能な社債について、評価損を計上しないなどの不適正な会計処理による虚偽記載を課徴金納付命令勧告の対象とした初めての事案であるという点に特徴があります。

 

【2025年7月14日】

東証、「2024新規上場ガイドブック(プライム市場編)」の改訂版を公表

https://www.jpx.co.jp/equities/listing-on-tse/new/guide-new/nlsgeu000005p5pv-att/nlsgeu000005p5xn.pdf

 

東証は、2025年7月14日、「2024新規上場ガイドブック(プライム市場編)」の改訂版を公表しました。本改訂により、上場審査等に関するガイドラインⅢ4.(5)※7に基づく審査のポイントとして、内部通報制度の整備運用状況の確認が追加されました。具体的には、社内・社外窓口の設置や対応フロー(通報受付、通報者保護、調査、是正措置、再発防止策の一連の流れ)の整備状況のほか、重要な通報内容の有無、役職員等への周知状況等について確認がなされるとのことです。なお、通報実績がない場合は、役職員等への周知が十分か、制度の利用促進のための施策を講じているか等について確認をすることがあるとされています。

 

※7 「新規上場申請者の企業グループにおいて、その経営活動その他の事項に関する法令等を遵守するための有効な体制が、適切に整備、運用され、また、最近において重大な法令違反を犯しておらず、今後においても重大な法令違反となるおそれのある行為を行っていない状況にあると認められること。」

 

【2025年7月17日】

金融審議会、「『サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ』中間論点整理」を公表

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20250717.html

 

金融審議会は、2025年7月17日、サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループにおける審議の結果を踏まえた中間論点整理を公表しました。

 

本中間論点整理においては、日本におけるサステナビリティ情報開示の基準(SSBJ基準)※8の適用と第三者保証(企業が開示するサステナビリティ関連の情報の信頼性を第三者が評価、保証するプロセス)の導入時期等について、プライム市場上場企業を対象に、2027年3月期以降、時価総額の大きな企業から順次、SSBJ基準に準拠した有価証券報告書の作成を義務付けることや、SSBJ基準の適用が義務付けられた翌年から第三者保証を義務付けること等が適当であると提言しています。

 

※8 SSBJ基準とは、日本サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が策定した3つの基準(サステナビリティ開示基準の適用(SSBJ適用基準)、一般開示基準、気候関連開示基準)の総称です。

 

また、SSBJ基準の適用に伴う環境整備の一環として、有価証券報告書の提出期限の延長、SSBJ基準の適用状況等の開示、開示例の収集や公表等の措置を取ることが適当であると提言しています。

 

本中間論点整理は、今後の有価証券報告書の虚偽記載等に対する責任のあり方については、セーフハーバー(一定の条件を満たせば虚偽記載に問われないとするルール)の整備を含め、虚偽記載等に対する責任の範囲を明確にするための制度を整備することを指摘しています。

 

【2025年7月24日】

改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会、「取りまとめ報告書(案)」を公表

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi06100001_00133.html

 

法務省内に設置された、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会は、2025年7月24日、「取りまとめ報告書(案)」を公表しました。本報告書案は、刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成28年法律第54号)付則9条に基づき、取調べの録音・録画等に関する制度の在り方等についての検討結果を取りまとめたものです。

 

本報告書案は、例えば以下のとおり、各制度についての意見等を紹介した上で、新たな検討の場を設けて、具体的に検討を行うことを強く期待するとしています。

 

【取調べの録音・録画等に関する制度の在り方等】

・ 取調べの録音

・ 録画制度の対象とする事件の範囲※9、取調べの録音・録画義務の除外事由の範囲※10、逮捕・勾留されていない被疑者や被疑者以外の者の取調べを録音・録画制度の対象とすべきか否か等について、録音・録画制度の対象拡大に賛成、反対の両立場の意見を紹介しています。

 

※9 現行法では、取調べの録音・録画制度は、裁判員制度対象事件及びいわゆる検察官独自捜査事件を対象とするとされています。

 

※10現行法では、記録に必要な機器の故障その他のやむを得ない事情により、記録をすることができないとき等の事由が除外事由とされています。

 

・ 取調べの録音

・ 録画制度の現行の運用それ自体には、おおむね問題はないと考えられるとしています。

 

【証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度※11

※11 特定の財政経済犯罪及び薬物銃器犯罪を対象として、検察官と被疑者・被告人が、弁護人の同意がある場合に、(1)被疑者・被告人が、他人の刑事事件について、供述をしたり、証拠物を提出するなどの協力行為をすること、(2)検察官が、被疑者・被告人の事件について、不起訴にしたり、軽い訴因で起訴したり、軽い求刑をするなどの有利な取扱いをすることを内容とする合意をすることができるものです。

 

・ 現時点で広く活用されている状況にあるとは言えず、その要因は必ずしも明らかでないものの、合意制度は、証拠収集に占める取調べの比重を低下させるための有効な手法となり得ることから、その利用が有効・適切と考えられる事案において、より積極的に活用することを模索すべきであるとしています。

 

・ 現行法では認められていない、自己の刑事事件に関して捜査・公判に協力することと引換えに刑の減免等の恩典が与えられる、いわゆる自己負罪型の合意制度については、種々の法的な課題に加え、被疑者が罪を認めたら罰が軽くなるという制度が国民の理解を得られるかなどといった課題や、虚偽自白の誘発をいかにして防止するかといった課題があり、いずれ本格的な検討を迫られる時期が来ると考えられるため、捜査・公判協力型の合意制度の運用状況を注視しつつ、基礎的な調査・検討を始めていく必要があるとしています。

 

 

以上

 

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