Ⅰ 『法律実務家のためのコンプライアンスと危機管理の基礎知識』と危機管理グループ
執筆者:木目田 裕
本年6月に、有斐閣の「法律実務家のための基礎知識」シリーズとして、私の監修・執筆、西村あさひ法律事務所・外国法共同事業危機管理グループ編、ということで、『法律実務家のためのコンプライアンスと危機管理の基礎知識』という書籍※1を上梓させて頂きました。
※1 https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641139756
この有斐閣のシリーズにおいては、私的再生について髙井章光弁護士、特許について城山康文弁護士、人事労務管理について木下潮音弁護士ら第一芙蓉法律事務所の先生方といった、各専門分野で一流の実務家の先生方が執筆されております。
『法律実務家のためのコンプライアンスと危機管理の基礎知識』を含め、このシリーズは、弁護士などの法曹や、企業や官庁等において法務・コンプライアンスに関わる役職員などの法律実務家を主要な読者層として想定して、コンパクトに、法律実務家が具体的な案件に取り組むために理解しておいたほうがよい法分野・関連分野の基礎知識を習得できるように企画されています。ですから、企業・官庁等における研修のテキストとして、あるいは、法科大学院や学部における教科書としても活用して頂けるものと考えております。
私個人として、この『法律実務家のためのコンプライアンスと危機管理の基礎知識』の上梓にあたり、何にもまして、最も嬉しいことは、本書の執筆者たちのことです。
本書の執筆者は、いずれも、当事務所(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業)の危機管理グループに所属する弁護士であり、「はしがき」に書いたように、「いずれも企業不祥事について実務経験豊富なパートナーであり、監修者において誇りに思っているチームの仲間」です。
私が、法務検察を退官後、当事務所で危機管理という仕事を始めてから20年以上が経ちますが、本書の執筆者は、検事出身の平尾弁護士や警察庁出身の北條弁護士を除き、基本的にほぼ全員が当事務所の生え抜き弁護士です。彼ら・彼女らは、一年生の弁護士のときから、常に私たちと一緒になって、いくつもの、歴史に残る大きな案件から、小さくても本当に大切な案件まで、数ある企業不祥事事案に日夜呻吟しながら一緒に取り組んできて、何度も何度も、みんなで一緒に全力で仕事をしてきました。その結果として、私自身も成長し、彼ら・彼女らも成長し、今では、こういった連中は、当事務所において、それぞれの分野において第一人者というべき弁護士に成長しています。
私が世の中に対して誇れること、あるいは、残すことができたことがあったとすれば、それは、こうした連中を、上から目線で恐縮ながら※2、育て上げることができたこと、その一点です。このことは、編集上の分担の都合から、たまたま、この本の執筆にタッチしていない弁護士も含めて、危機管理グループの数十人の仲間の全てについて等しく当てはまることです。
※2 もっとも、こうした連中からすれば、自分たちが頑張ったのだ、当事務所・危機管理グループを支えてきたのは自分たちだと思うのでしょう。そういう自負心もまた素晴らしいのではないかと思います。
ともあれ、本書の中身については、皆様にお目通し頂くことが何より肝要です。
監修者かつ執筆者の一人としては、マックス・ウェーバーの『職業としての学問』(尾高邦雄訳、岩波文庫・電子書籍版)から次の文章を引用して、本稿を締めさせて頂きます。
「学問のばあいでは、自分の仕事が十年たち、二十年たち、また五十年たつうちには、いつか時代遅れになるであろうということは、だれでも知っている・・・(中略)学問上の「達成」はつねに新しい「問題提出」を意味する。それは他の仕事によって「打ち破られ」、時代遅れとなることをみずから欲するのである。」
以上
Ⅱ インドネシアにおける贈収賄規制の概要、取締りの困難性について
執筆者:井浪 敏史、イカング・ダーヤント
1.はじめに
インドネシアは世界で4番目に人口の多い国であり、ASEAN最大の国です。経済は成長を続けており、多くの日本企業にとっての重要な投資先国の一つとなっています。
一方、各国の腐敗度合いを示す代表的指標であり、Transparency Internationalが毎年公表しているCorruption PerceptionsIndex(腐敗認識指数)の2024年版において、インドネシアは180か国中99位に位置付けられており、贈収賄のリスクは比較的高いと考えられます。
インドネシアは贈収賄を規制するために厳格な法律/制度を導入していますが、贈収賄の取締りに苦闘しています。以下ではその概要をご紹介します。
2.インドネシアにおける贈収賄規制の枠組み
インドネシアにおける贈収賄を規制する主な法律は、Law No.20 of 2001により改正されたLaw No.31 of 1999 on the Eradication of the Criminal Act of Corruption(以下「Corruption Eradication Act」といいます。)及びLaw No.11 of 1980 on the Criminal Act Bribery(以下「Anti-Bribery Act」といいます。)です。
Anti-Bribery Actは現在も有効ですが、当局による執行は主にCorruption Eradication Actに基づいて行われています。
Corruption Eradication Actでは、公職者に対する贈収賄とみなされる以下の行為を禁止しています。
(Corruption Eradication Act 5条1項)
(1)公務員(国家公務員又は国家行政官)に、その公職に基づいて職務に違反する特定の行為を行わせる又は差し控えさせる目的で、便益を供与又は約束すること。
(2)公職者に、公職に基づくかどうかにかかわらず、義務違反となる行為又は不作為を理由に又はそれに関連して何かを供与すること。
(Corruption Eradication Act 13条)
(3)公職者に、公的権限若しくは地位を濫用させる目的で贈答若しくは約束をした場合又は供与者が贈答若しくは約束することにより、公務員の権限若しくは地位に利害関係を有すると認められる場合。
上記のうち、5条のポイントは、収受する者の義務又は職務に反する、特定の作為又は不作為に関連する贈答品(又は利益)の不正な申し出という点にあります。
公職者の定義
インドネシアのCorruption Eradication Act及びAnti-Bribery Actにおいて「公職者」の用語は広く定義されており、国又は公共機関から資金提供を受ける企業又はその施設を利用する企業の従業員及び役員を含みます。政府から給料を受領する者(典型的な国家公務員)ではない者であっても、国(インドネシア共和国又はインドネシア共和国内の地域)が資金提供する企業に雇用されている場合は、国家公務員とみなされる場合があります。Anti-CorruptionLawの目的上、行政、立法及び司法の機能を遂行する国家行政官(下院議員、大臣、裁判官、州立大学の学長など。)も、公職者の定義に該当します。
利益の定義
インドネシアのCorruption Eradication Actでは、贈答品、旅行、食事、接待などの交際費は利益(gratification)として分類されています。Corruption Eradication Actの下では、公職者に与えられた全ての利益は賄賂に当たり得ますが、処罰対象となる犯罪行為に該当するのは、公職者の地位に関係して供与される場合であり、見返りとして供与される又は見込まれる便宜又は恩恵を伴い、収受者による義務又は職務に反する作為又は不作為が期待される場合であることが条件となります。
Corruption Eradication Actでは、いくら以下の金額であれば賄賂に当たらないという最低金額基準は設けられていません。しかし、Corruption Eradication Commission(KPK)が発行した通達である、B1341/01-13/03/2017 On Guidelines and Limitations of Gratuities, etc. には、結婚式、誕生日のお祝い、洗礼、割礼、及びその他の伝統的又は宗教的な儀式の際の現金又は贈答品の供与等、必ずしも贈収賄とは見なされない公職者への贈答品の一覧が記載されています(イベントごとに100万ルピアの上限が設けられています。)。各官庁や政府機関は、国家公務員に対して同様のガイドラインを発行しています。これらのガイドラインの規定は、賄賂に該当しない基準としてのセーフハーバーとして扱うことはできませんが、許容され得る社会的儀礼の水準の検討に際して役に立ち得ると考えられます。
利益を収受した公職者は、収受日から30営業日以内に収受した利益をKPKに報告する必要があり(Corruption Eradication Act 12条C)、当該報告がKPKによる贈収賄発見のきっかけとなる場合があります。
ファシリテーション・ペイメント
インドネシアの法律では、ファシリテーション・ペイメントに対する例外は設けられていません。
Corruption Eradication Actの下では、ファシリテーション・ペイメントも利益(gratification)に当たり得ます。Corruption Eradication Act 12条Bは、利益が賄賂であるかの証明責任を負う者の判断基準を、次のとおり定めています。
(a) 1,000万ルピア以上の金額の場合、賄賂ではないことを証明する責任は収受者が負う。
(b) 1,000万ルピア未満の金額の場合、賄賂ではないことを証明する責任は検察官が負う。
商業贈収賄(民間の主体間)
民間企業の役職員間の贈収賄について、Corruption Eradication Actにおいては、個人及び企業を含め、広い意味で、国の財政又は経済に損害を与える立場にある者が利益を得る行為が禁止されています(Corruption Eradication Act 2条)。また、Anti-Bribery Actは、公益のために行動する義務を負う者に対する利益の供与も禁止しています(Anti-Bribery Act 2条)。これらの規定からは、国の財政、経済、公益に関係する可能性のある民間企業の役職員に対する贈賄行為は禁止されることになります。
もっとも、それ以外の場合、インドネシアの法制度では、民間部門における贈収賄を具体的に規制しておらず、民間企業の役職員間の贈収賄に対して、Penal Code(刑法)に基づく犯罪行為(横領等)が適用されるか、詐欺的行為を禁止するIndonesian Civil Code 378条が適用されるか等が問題となります。
処罰
Corruption Eradication Act 5条1項に違反して贈賄行為を行った個人には、1億5,000万ルピア以下の罰金若しくは3年以下の禁固又はその両者が科されます(Corruption Eradication Act 5条)。さらに、Corruption Eradication Act 13条に違反して贈収賄行為を行った個人には、5,000万ルピアから25億ルピアの罰金若しくは1年から5年の禁固又はその両方が科されます(Corruption Eradication Act 13条)。
法人が(雇用契約又はその他の関係に基づき、事業の範囲内で贈賄行為が実行された場合に成立します。)又は法人に代わって贈賄行為が行われた場合、法人及びその経営陣も上記の刑罰の対象となります(法人の場合は罰金のみ科されますが、最高で上記金額の3分の1が加算されます。)(Corruption Eradication Act 20条)。
3.インドネシアにおける汚職の執行当局、贈収賄の取締りの困難性
贈収賄はインドネシアの発展にとって深刻な障害であり、贈収賄の取締りは、変革時期において優先すべき重要事項でした。インドネシア政府は、より効率的に贈収賄に取り組むため、2002年に、KPKを設立しました。KPKは、捜査及び訴追権限を有しています。
インドネシアにおいて、贈収賄/汚職事件に対する捜査権限を有する3つの機関(KPK、インドネシア国家警察及びAttorneyGeneral'sOffice(AGO))は、基本的に同等の立場にあります。
どの機関が贈収賄・汚職の捜査を開始すべきかについての定めはなく、捜査を行うのに十分な初期証拠を有する機関が捜査を進めることができます。これにより、権限が重複する可能性があり、3つの機関全てが汚職行為の捜査に対して同等の立場を有しますが、各機関が事件について独自の見解を有する場合があるため、贈収賄/汚職事件の執行手続を弱める可能性があります。Corruption Eradication Actは、汚職が次のいずれかを満たす場合、一般的にKPKが関与機関となることを定めています。
・ 州の法執行機関、州の運営者及びその他の関係者が汚職の犯罪行為の執行に関与する場合。
・ 社会的な懸念につながる場合。
・ 最低10億ルピアの国家損失を伴う場合。
インドネシア共和国政府は、次の取り組みも行いました。
(a) 市民社会及び非政府団体(NGO)を変革プロセスに組込むことによる、汚職防止関係者の複数のネットワーク構築。
(b) 事業規制及び公的調達などの主要な規制枠組みの改定。
もっとも、汚職は依然として深刻な問題であり、進捗は全体的に遅れています。
汚職問題に関する変革のペースが緩やかである理由の一つとして、利権が制度的文化として深く根付いていることが挙げられます。多くの場合、関与する政府機関が、賄賂は汚職行為に当たると考えていません。
贈収賄の取締りにおける2つ目の課題として、インドネシアの監督システムにおいて著しく人員が不足していることが挙げられます。多くの取締機関は、特に捜査、調査及びインタビューの技術において、贈収賄や公共支出の濫用についての複雑な事件に対処するために必要な能力及び高度なスキルを欠いています。
AGO、インドネシア国家警察及びKPK等の主要機関間のコミュニケーション及び調整が不足していることが、変革の取組みをさらに困難にしています。
ごく最近においても、2025年3月に、大規模な石油・天然ガスの国営企業であるPT Pertaminaの子会社の幹部が、2018年から2023年までの期間における同社の原油・燃料調達での汚職の疑いで逮捕され、その結果、約193兆7,000億ルピア(125億米ドル)の国家損失が生じました。
4.最後に
以上のとおり、インドネシアでは贈収賄は厳しく禁止されており、法人の関係者が贈収賄を行った場合、法人及びその経営陣の責任も法律で定められています。一方で、様々な背景事情の下、汚職は依然として深刻な社会問題に当たります。
このような状況下で、インドネシアで事業を行う企業は、関連する公職者に利益を供与しなければ許可・ライセンスを取得できないかのように思われる状況など、困難な実務的課題に直面することがよくあります。このような状況下でも、従業員・経営陣及び会社の両者に重大な影響を生じないようにするため、厳しい規制の下で贈収賄を行うことによる法的リスクを理解し、適切に対応することが重要となります。
以上
Ⅲ 最近の危機管理・コンプライアンスに係るトピックについて
執筆者:木目田 裕、宮本 聡、西田 朝輝、澤井 雅登、藤尾 春香
危機管理又はコンプライアンスの観点から、重要と思われるトピックを以下のとおり取りまとめましたので、ご参照ください。
なお、個別の案件につきましては、当事務所が関与しているものもありますため、一切掲載を控えさせていただいております。
【2025年7月15日】
金融庁、「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)を公表
https://www.fsa.go.jp/news/r7/shouken/20250715/20250715.html
金融庁は、2025年7月15日、「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)を公表しました。本改正案は、証券会社のウェブサイトを装ったフィッシングサイト等で窃取した顧客情報(ログインIDやパスワード等)によるインターネット取引サービスでの不正アクセス・不正取引(第三者による取引)の被害が多発したことを踏まえ、インターネット取引における認証方法や不正防止策を強化するために、所要の改正を行うものです。
本改正案においては、金融商品取引業者等に対する監督の主な着眼点として、インターネット取引について、インターネット等の不正アクセス・不正取引等の犯罪行為に対する対策等に取り組むのための内部管理態勢が整備されているか、セキュリティが確保されているか、適切な顧客対応を行う態勢が整備されているか等の項目が追加されています。
【2025年7月15日】
日本証券業協会、「インターネット取引における不正アクセス等防止に向けたガイドライン」の改正案を公表
https://www.jsda.or.jp/houdou/2025/20250715_pabukome_fuseiaccess.pdf
日本証券業協会は、2025年7月15日、「インターネット取引における不正アクセス等防止に向けたガイドライン」※3の改正案を公表しました。本改正案は、今般、公的個人認証サービス利用や多要素認証の普及・定着等インターネット技術の利活用に係る環境の変化に加え、昨今、フィッシング及びマルウェアにより、顧客情報(ID、パスワード等)が窃取され、インターネット取引において不正アクセス・なりすまし取引等により、従来の不正出金ではなく、不公正取引に悪用されている事案が発生したことを踏まえ、所要の改正を行うものです。
※3 本ガイドラインは、インターネット取引における証券取引口座の開設時から出金に至る各段階における不正防止、脆弱性対策や情報管理、不正利用時の対応等についての具体的な留意事項を取りまとめたものです。
本改正案においては、インターネット取引における不正アクセス等の防止に向けた対応として、ログイン時、出金時、出金先銀行口座の変更時等、重要な操作時におけるフィッシングに耐性のある多要素認証の実装及び必須化、不正売買、不正出金等を防止・検知するための設定等の利用状況確認等を行うこと、フィッシング詐欺等被害未然防止のための措置を講じること、顧客の被害拡大・二次被害等を防止するための周知・注意喚起等を行うこと等の項目が追加されています。
【2025年7月29日】
公正取引委員会、「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律第三条第一項の事業の規模を定める政令等の一部を改正する政令」等の公表
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/jul/250729_smartphone.html
公正取引委員会は、2025年7月29日、「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律第三条第一項の事業の規模を定める政令等の一部を改正する政令」の改正内容及び関連する指針等を公表しました。
本政令の改正は、2024年6月に成立した「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(以下「スマホソフトウェア競争促進法」といいます。)において規定されている、以下の事項等を定めるものです。
・ 指定事業者による基本動作ソフトウェアに関する禁止行為について、その例外要件の一つである、「サイバーセキュリティの確保等」の具体的内容
・ 指定事業者によるアプリストアに関する禁止行為の一つである、個別アプリ事業者がその提供する個別ソフトウェアを通じて、商品又は役務を提供し、これと同一の商品又は役務を関連ウェブページ等を通じて提供する場合に準ずるものとして政令で定める場合の具体的内容
・ 課徴金の基礎となる違反行為に係る売上額の算定方法等
改正後の本政令は、スマホソフトウェア競争促進法の全面施行日と同じ、2025年12月18日に施行される予定です。
【2025年7月31日】
消費者庁、景品表示法に基づく法的措置件数の推移及び措置事件の概要を公表
https://www.caa.go.jp/notice/entry/024740/
消費者庁は、2025年7月31日、2025年6月30日時点における景品表示法に基づく法的措置件数の推移を公表しました。
本発表によると、2024年度において国が出した措置命令※4の件数は26件(2022年度は41件、2023年度は44件)、課徴金納付命令※5の件数は7件(2022年度は17件、2023年度は12件)、景品表示法の2024年10月改正で導入された確約計画の認定※6がなされたケースは1件とのことです。
※4 景品表示法4条に基づく景品類の制限や、景品表示法5条に基づく不当な表示の禁止に違反する行為があるときに、当該事業者に対し、その行為の差止めや、その行為が再び行われることを防止するために必要な事項を命ずることができる措置を指します(景品表示法7条)。
※5 景品表示法5条に基づく不当な表示の禁止に違反する行為があるときに、事業者に対し、当該行為に係る売上額の3%を課徴金として納付するよう命ずることができる措置を指します(景品表示法8条)。
※6 景品表示法4条や5条に違反している疑いがある場合、内閣総理大臣の通知を受けて、事業者が是正措置に関する計画を作成して内閣総理大臣に提出し、認定を受けることで、措置命令や課徴金納付命令の適用を免れることができる制度を指します。
本発表には、2024年7月から2025年6月までに国又は都道府県等において法的措置を採った事件の事案概要をまとめた一覧表が付されており、参考になります。
【2025年8月1日】
証券取引等監視委員会、「令和7事務年度証券モニタリング基本方針」を公表
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2025/2025/20250801-2.html
証券取引等監視委員会は、2025年8月1日、「令和7事務年度証券モニタリング基本方針」を公表しました。本方針は、令和7事務年度における、金融商品取引業者等に対する証券モニタリング※7の主な検証事項等について取りまとめたものです。
※7 証券モニタリングとは、金融商品取引法56条の2等の検査権限に基づく「検査」と、検査以外の「モニタリング」を総称するものです。
本方針は、昨事務年度の証券モニタリングを通じて判明した事項※8、近年の金融商品取引業者等を取り巻く環境等※9を踏まえ、業態横断的な検証事項として、以下の事項を指摘しています。
※8 昨事務年度の証券モニタリングを通じて判明した事項として、例えば、第一種金融商品取引業者、登録金融機関及び金融商品仲介業者について、虚偽告知・誤解表示、顧客属性に照らして不適切な勧誘、売買管理態勢の不備等が見られたこと、投資運用業者について投資信託約款と異なる業務運営を行っていること等が挙げられています。
※9 近年の金融商品取引業者等を取り巻く環境等として、2024年1月のNISA制度の抜本的拡充・恒久化や同年8月の金融経済教育推進機構(J-FLEC)本格稼働等を踏まえて顧客本位の業務運営が求められていること、インターネット取引における不正アクセス・不正取引を含むサイバー攻撃による被害等のサイバーセキュリティリスクが高まっていること(インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引による被害が急増していることについては、下記URLをご参照ください。https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/chuui_phishing.html)、詐欺的な投資勧誘の被害額拡大、新たな金融商品の広がりといった変化があったこと等が指摘されています。
・ 適合性原則を踏まえた適正な投資勧誘等に重点を置いた内部管理態勢の構築や、顧客本位の業務運営を踏まえた販売状況等
・ 「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」※10を踏まえたサイバーセキュリティ対策の十分性や、デジタル化の進展に伴うシステムリスク管理の対応状況
・ ビジネスモデルの変化とそれに対応した内部管理態勢の構築
・ AML/CFT(マネー・ロンダリング及びテロ資金供与対策)に係る内部管理態勢の定着状況
・ 内部監査の結果及び自主規制機関の監査等で指摘された事項に係る改善策及び再発防止策の取組状況
※10 「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」の内容については、下記URLをご参照ください。https://www.fsa.go.jp/common/law/cybersecurity_guideline.pdf
【2025年8月19日】
東京弁護士会中小企業法律支援センター、「SDGs コンプライアンス簡易チェックリスト」を公表
https://www.toben.or.jp/know/iinkai/chusho/jisseki/sdgsptsdgs.html
東京弁護士会の中小企業法律支援センターSDGsプロジェクトチームは、2025年8月19日、中小企業の経営者・サステナビリティ担当者が簡易迅速にSDGsコンプライアンスの遵守状況等をチェックするための、「SDGsコンプライアンス簡易チェックリスト」(エクセルシート)を公表しました。
本チェックリストは、「従業員の人権」、「消費者の人権」、「取引先・サプライチェーンの人権」、「公正な事業」、「環境や地域社会」、「ガバナンス」の6つのカテゴリーに分類された計20項目のチェック項目が設けられ、各チェック項目に0点から3点までの評価点数を入力することで、SDGsコンプライアンスの達成度がグラフで表示されるものとなっており、参考になります。
【2025年8月22日】
消費者庁、「インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に対する改善指導について(令和7年4月~6月)」を公表
消費者庁は、2025年8月22日、同年4月から6月までの間に実施した、インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示の監視状況を公表しました。
消費者庁は、2025年4月から同年6月までの間、インターネットの検索エンジンを用いた検索を行い、商品のサイトを目視により確認することで、健康増進法65条1項※11に違反するおそれのある文言等を含む表示を行っていた139事業者(140商品)に対し、表示の改善指導を実施しました。表示されていた健康保持増進効果等としては、腸内環境改善、免疫力強化、花粉症対策、抗アレルギー、ダイエット、若返り・老化防止等が確認されています。
※11 健康増進法65条1項は、健康保持増進効果等について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をすることを禁止しています。
以上





