「近くに住んでるから」母の介護を一任された長女
「母さんがかわいそうだ」
良子さん(55歳・仮名)は、今でもその言葉を許せません。母の暮らす施設で兄が放った言葉が、長年積み重ねてきた我慢を吹き飛ばしたのです。
良子さんは結婚後も実家から車で20分ほどの距離に住み、すでに子育ては一段落。パートで働きながら、夫と二人で生活していました。
一人暮らしをしている母の収入は月13万円の年金。貯蓄は2,000万円ほど、あとは古い持ち家がありました。兄は遠方で家庭を持っており、「近くに住んでいる」という理由で、母の見守り役は良子さんに固定されていました。
買い物の手伝いや通院の付き添い程度であれば問題はありませんでした。ところが、母が自宅で転倒し、大腿骨を骨折したことで事態は一変。手術と入院を経て退院したものの、歩行は不安定。要介護2の認定が下りました。
洗濯、食事、服薬管理。良子さんはパートを減らし、平日も実家に通う生活に。介護サービスは使えるのに、母は「他人に世話されるのは嫌」と拒否。良子さんの負担は増える一方でした。
何もしない兄が発した言葉に激昂
在宅介護は4年続きました。母は85歳になり、要介護3に。夜間の見守りも必要になり、良子さんは慢性的な睡眠不足と疲労に悩まされるようになりました。母を説得してでも、施設で面倒見てもらわなければ、共倒れになる。苦渋の判断でした。
母が無事、施設(特養)に入って1ヵ月後。兄が母を訪ねたいというので良子さんが同席。「ここはあんまり好きじゃない」「家に帰りたい」と不満を漏らす母に、兄が発した言葉は、まさかのものでした。
「母さんがかわいそうだ。施設に入れなくても、家で面倒見られなかったのか? お前、自分が楽したかっただけじゃないか」
瞬間的に、猛烈な怒りが湧きました。何もしないくせに偽善を言うなと、気が付けば荒々しい言葉で良子さんは叫んでいました。
「じゃあお前がやれよ!」
