投機筋の「円売り」継続見込み…「為替介入」の可能性はあるか
ところで、先述したように、CFTC統計の投機筋の円買い越しは、過去最高の17万枚から先週は10万枚まで縮小したものの、円が低金利であることから本来は買いには不利であるといえます。
さらに、2024年までの買い越し最高値である2016年の7万枚をいまだ大きく上回っていることなどを考えると、円はまだ“買われ過ぎ”であると考えられます(図表7参照)。
したがって、その修正にともなう円売りが続く可能性が高いことから、米ドル/円は下値が限られ、上値を試す状況が今週も続きそうです。
その一方で、最近の円売りの口実となっている日本の政局不安や財政赤字拡大の懸念は、日本株が大きく下がっているわけでもない状況下、違和感をおぼえます。
最近、政府高官が「投機を含めて、為替市場の動きを憂慮している」と発言しているように、債券や株式相場に比べて、日本の政治要因を受けた為替市場の反応は過剰な面があるのではないでしょうか。
「為替介入」の可能性はあるか?
では、このまま過剰反応の円安が続いた場合、円安阻止のために「為替介入」が行われる可能性はあるのでしょうか。
日本の通貨当局が円安阻止のために2022、2024年に行った為替介入には、下記のような共通点があります。
1.米ドル/円が前回の高値を更新する
2.5年MA(移動平均線)を2割以上上回る
3.120日MAを5%以上上回る
など
これを参考にすると、5年MAかい離率などで見る限り、米ドル/円が150円を上回った程度では米ドル売り介入を行う条件には達しないでしょう。しかし、ユーロ/円が175円を上回り、2024年7月に記録した前回の高値を更新すると、ユーロ売り・円買い介入の条件を満たすことになります(図表8、9参照)。
今週の米ドル/円予想レンジは「146~151円」
日本の為替介入は、これまでは米ドル/円が大前提であり、ユーロ/円などの介入はあくまでその補助的な位置づけでした。
しかし、トランプ政権は前バイデン政権と異なり、非関税障壁である“行き過ぎた円安”を容認しない姿勢であるとみられていることから、円安再燃への当局の対応も注目したいところです。
以上を踏まえ、今週の米ドル/円は「146~151円」と予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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