海外就職に必要なのは“期待”ではなく“戦略”
SNSでは、「マレーシアで海外就職してカフェ巡り」「物価の安い東南アジアでゆるく生きる」「週末は近隣諸国へ旅行」──そんなキラキラした投稿があふれています。しかし現地採用のリアルは、その幻想とは大きくかけ離れています。
特に就労ビザの仕組みは要注意です。マレーシアの就労ビザは企業が発給の主体となるスポンサー制を採用しているため、仕事を失った瞬間にビザも無効になります。再就職には英語力や専門性が求められ、誰にでも簡単に見つかるわけではありません。加えて、医療や行政サービス、トラブル対応などのインフラも日本ほど整っておらず、「困ったときに頼れる環境」がないストレスは想像以上です。
もちろん、こうした海外でのチャレンジそのものを否定するつもりはありません。むしろ、自分のスキルを武器に国境を越えて働くという行動は、非常に価値のある経験です。問題なのは、「ただただ楽をしたい」「日本に疲れたからなんとなく逃げたい」「海外にいれば人生が何とかなる」といった、根拠のない楽観と“映え優先”の幻想です。
もし、そうした目的でマレーシアを目指すのであれば、マレーシアで事業を展開している代表者として正直に言えば「来なくていい」とすら思います。海外での生活は、甘くはありません。
一方で、自分のキャリアや価値観を見つめ直し、英語力や専門性を磨きながら「海外で成長したい」と本気で思える人にとっては、マレーシアはきっと素晴らしい舞台になります。異文化の中で働くことは簡単ではないですが、得られるものもまた大きい。要は「目的」と「準備」の問題なのです。
海外就職は“逃げ場”ではなく“戦場”です。魅力的な選択肢ではあるけれど、そこにあるのは現実です。
その現実をしっかり見据えたうえで、ぜひ挑戦してほしい─そんな想いを込めて、あえて厳しめに伝えておきたいと思います。
海外就職は逃げではなく挑戦──“準備”こそがキャリアの鍵
ここまでご紹介してきたように、マレーシアでの現地採用という選択肢には、収入や生活コスト、就労ビザの制約、医療やインフラの違いといった「現実的な制約」がいくつも存在します。
そしてそれらは、SNSで語られる“ゆるくて豊かな海外生活”とは、大きく隔たりのあるものです。
ただ、それでも「行くべきではない」と断言したいわけではありません。むしろ、こうした現実をきちんと理解したうえで、自分のスキルやキャリアを試したい、世界に飛び出したいと思う人にとっては、マレーシアは十分に挑戦する価値のある国です。
重要なのは、「期待」ではなく「準備」をして臨むこと。
英語力はどのくらい必要か、自分の専門性はどこにあるのか、万一仕事を失ったときにどう立て直すのか──そうした視点を持てる人であれば、マレーシアでの生活は「単なる移住」ではなく、「グローバルなキャリア構築の第一歩」になります。
海外で暮らすことは、甘い話ではありません。ですが、現実を直視し、地に足をつけて歩む人には、新しい景色が待っている。
この記事が、あなたの意思決定にとっての「現実的な羅針盤」になれば幸いです。
