具体的な金投資手段とは?それぞれのメリットデメリットも解説
投資家が⾦投資を通じて期待される様々な恩恵を享受するには、いくつかの選択肢があります。ETF(上場投資信託)、投資信託、⾦塊や⾦貨、あるいは⾦鉱株といった様々な投資⼿段の利点や留意点について理解を深めることは、⾃⾝の投資スタイルに最適な方法を⾒極めるうえで役に⽴つはずです。
金を裏付けとするETFの特徴の一つに、⾦へのエクスポージャーを手軽に得られるだけでなく、取引所を通じた売買のしやすさや価格の透明性、そして比較的低い平均経費率といったパッシブ型ETF特有の利点が挙げられます。なかでもSPDR⾦ETFシリーズのように⾦現物を裏付けとした商品は、ビッド・アスク・スプレッドや⾦価格との乖離(トラッキングエラー)が小さく、取引コストを抑えた効率的な投資⼿段として注目されています。
また、⾦ETFは流動性も高く、ポートフォリオの構築やリバランスにも対応できる柔軟性があります。ただし、全ての⾦ETFが⾦地⾦を保有しているとは限らないため、各ETFの保有資産を慎重に確認し、現物の⾦への投資比率を把握しておくことが重要です。これは、⾦⾃体への投資配分⽐率が低い、または直接的/間接的に投資していない⾦鉱株ETFや⾦投資信託と⽐較する際に、特に留意すべきポイントです。
投資信託も⽇次で流動性を提供するものの、ETFとは異なり、取引所でリアルタイムに売買することはできません。また、運⽤ポートフォリオに⾦のエクスポージャーを取っているバランスファンドは、⾦だけでなく他の資産も組み入れているため、⾦価格の動きに連動しない場合もあり、⾦の保有によって得られる本来の利点が薄れてしまう可能性があります。さらに投資信託は、多くのETFと⽐べて総経費率が⾼めである点にも注意が必要です。
金鉱株や金鉱株ETFも、投資家が⾦への間接的なエクスポージャーを取る⼿段の⼀つです。ただし、これらは金そのものに投資するわけではなく、金を採掘・生産する企業への投資となるため、金価格だけでなく、事業の収益性、業界内の競争状況、財務健全性や経営戦略といったさまざまな要因の影響を受けます。そのため、金現物や金ETFとは性質が異なることを理解しておく必要があります。
金塊と金貨は、現在も⾦へのアクセス手段として世界中の投資家に広く利用されていますが、その傾向は変化しつつあります。現在、世界の金ETFは3,541トンの金を保有しており※1、ETFを通じた投資の拡大は、金の保有手段としてETFを選ぶ投資家が増えていることを示しています。⾦塊や⾦貨の保有は、実物を所有するという点で非常に透明性が⾼いものの、購⼊時に市場価格にプレミアム(上乗せ)がつくことが多く、コスト面での注意が必要ですまた、保険、輸送、保管といった管理コストや売買時の流動性の低さも、実際の投資リターンに影響を及ぼしかねません。
金先物は、主に機関投資家や大口投資家がレバレッジ(借り⼊れ)を活⽤して金へのエクスポージャーを得たり、鉱山会社が金価格の変動リスクを低減したりする手段として利用しています。一般の個人投資家にはややハードルの高い手法といえるでしょう。
また、金先物には現物の裏付けがなく、決済期日が設定されているため、ポジションを維持するには限月ごとに建玉をロールオーバー(乗り換え)する必要があります。先物は一般に取引規模が大きく、売買手数料は低めですが、ロールオーバーにかかるコストなども含めた総コストを十分に考慮する必要があります。
最後に、金は、不安定な金融市場に直面する日本の個人投資家にとって、資産分散の一環として検討に値する有力な選択肢といえるでしょう。
※1 出所・ワールドゴールドカウンシル2025年5月31日現在
※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください。
アーロン・チャン
ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント ゴールド・ストラテジスト
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