(※画像はイメージです/PIXTA)

金市場は、構造的な強気サイクルのなかで高値圏を維持しやすい環境にあります。2025年の急騰からは上昇ペースが鈍化し、4,000~4,500ドルでの値固めが基本シナリオとみられる一方、ストラテジストたちは旺盛な需要とドル安トレンドを背景に、1オンス5,000ドル到達の強気シナリオにも注目しています。高騰を支える要因と2026年に予想される金市場の展開についてみていきましょう。なお、本稿はステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの5名のストラテジストによる共同執筆です。

金価格は上昇一服か…「4,000~4,500ドル」で値固めの見込み

2025年の金相場上昇(年間パフォーマンスは1979年以降で最高※1)は、2026年には鈍化する公算が大きく、従来よりも高い1オンス4,000~4,500ドルのレンジでの値固めとなる可能性があります。

 

・金価格を支える構造的な強気サイクル要因として、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和、中央銀行と個人からの旺盛な需要、上場投資信託(ETF)への資金流入、株式/債券の相関性の高まり、世界的な債務懸念などが挙げられます。

 

・戦略的資産再配分と地政学的要因が金価格を1オンス5,000ドルに到達させる追い風となる可能性があります。

金の強気サイクルを後押しする5つの要因

2026年に金価格が1オンス5,000ドルに達する可能性があるかと問われれば、1994年8月と、英国の伝説的ロックバンド、オアシス(2025年に大規模な世界ツアーを実施しました)のデビューアルバムのタイトル「Definitely Maybe(絶対、たぶん)」が思い出されます。

 

構造的な強気サイクルの中盤で、5つの構造的要因が引き続き金市況を形成しています。それらのトレンドは、2026年に反転する可能性は低く、全体として金価格にとって支援的な環境を示唆しています。

 

重要な点として、それらの要因は、一時的に金需要を押し上げる可能性のある短期的要因(ボラティリティの急上昇、リスク資産の急落、スタグフレーション懸念など)とは別物です:

 

1.フィアット通貨(不換通貨)の代替資産としての役割(alt-fiat)と世界的なディベースメント取引

世界の部門別債務は2025年半ばに340兆ドルに増加し、注目すべきことに、そのうち政府債務の割合も過去最高の30%に達しました※2。世界の国内総生産(GDP)の3~4倍にのぼる債務水準は投資家の間に懸念を引き起こしています。

 

記録的な債務と根強いインフレが長期債利回りを押し上げるなか、金はデュレーション・リスクと通貨価値の下落に対する魅力的なヘッジ手段となっています。

 

2. 株式/債券の相関性の高まり

コロナ禍後のインフレ急騰とFRBの引き締めサイクルの中で、米国の株式/債券の相関性は30年ぶりの高水準に上昇しました※3。2025年には相関がやや低下したものの、2000年代と2010年代に支配的だった逆相関の関係に戻るかどうかは不明です。

 

一方、金/米ドル(USD)は依然として負の相関傾向が続いています。株式と債券の相関性が歴史的な高水準にとどまった場合、投資家が伝統的な60/40または70/30ポートフォリオの代替を模索するなか、分散化手段とレフトテール(下方リスク)・ヘッジの手段としての金の役割はいっそう重要となるでしょう。

 

[図表1]米国の株式/債券および米ドル/金の四半期ごとの対数正規リターンのローリング3年相関性★1

 

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〈ご留意事項〉
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本稿に示されている内容は2025年11月25日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場及び他の条件によって変更される場合があります。本稿には将来予測に関する記述と見なされる情報が含まれており、そうした内容は将来の運用成果を保証するものではなく、実際の結果や展開は予測とは大きく異なる可能性があります。

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本資料は、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントが作成したものをステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が和訳したものです。内容については原文が優先されることをご了承下さい。

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〈注記〉
※1 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※2 国際金融協会(IIF)、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年6月30日時点。
※3 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※4 米投資信託協会 2025年9月30日時点。
※5 国際決済銀行(BIS)、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※6 IIF、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※7 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※8 ワールド ゴールド カウンシル 2025年10月31日時点。
※9 ワールド ゴールド カウンシル 2025年10月31日時点。
※10 ワールド ゴールド カウンシル 2025年11月5日時点。
※11 ワールド ゴールド カウンシル 2025年11月5日時点。
※12 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P. 2025年11月7日時点。
※13 ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月6日時点。
※14 ワールド ゴールド カウンシル 2025年11月6日時点。
※15 ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年10月31日時点。
※16 ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年10月31日時点。
※17 ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年10月31日時点。
※18 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント データは2025年11月30日時点。
※19 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント データは2025年11月30日時点。
※20 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント データは2025年11月30日時点。
※21 ワールド ゴールド カウンシル 2025年11月5日時点。
※22 ワールド ゴールド カウンシル 2025年11月5日時点。
※23 国際通貨基金(IMF) 2025年10月31日時点。
※24 IMF 2025年10月31日時点。
※25 IMF 2025年10月31日時点。
※26 IMF 2025年10月31日時点。
※27 中国人民銀行(PBOC) 2025年10月31日時点。
※28 PBOC 2025年10月31日時点。
※29 ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※30 ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※31 上海金取引所 2025年10月31日時点
※32 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P. 2025年9月23日時点
※33 「金豆」(豆粒大の純金)、しばしば1~10グラムの重さ
※34 ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年10月31日時点
※35 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月14日時点。
※36 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月14日時点。

★1 出所:ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント(1990-2025年)。

注:米国株式にはS&P500指数を、米国債券には、投資適格の米ドル建て固定金利課税債券市場のパフォーマンスを測定するブルームバーグ米国総合指数を使用しています。金にはロンドン貴金属市場協会(LBMA)スポット価格終値、米ドルにはドル指数(DXY)を使用しています。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。

★2 出所:ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、データは2025年11月21日時点。

注:USD=米ドル、EUR=ユーロ、JPY=円、GBP=英ポンド、CHF=スイスフラン、SEK=スウェーデン・クローナ、NOK=ノルウェー・クローネ、CAD=カナダドル、AUD=オーストラリアドル、NZD=ニュージーランドドル。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。

★3 出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2025年11月20日時点。

★4 出所:ワールド・ゴールド・カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2025年10月31日時点。

★5 出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、ワールド・ゴールド・カウンシル、2025年10月31日時点。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。

★6 現在のFF金利とSEPの長期予測との大きな差は2026年も緩和が続くことを示唆

★7 出所:ICEベンチマーク・アドミニストレーション、メタルズ・フォーカス、リフィニティブGFMS、ワールド・ゴールド・カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。データは2025年11月18日時点。

注:2025年の推定値は、同年第3四半期の純購入量634トン(報告ベース)と、2011-24年の年間需要に占める第4四半期の平均比率(25%)から導出した第4四半期の推定需要量に基づいています。2026年の予測値は、2011-25年の公的部門需要の前年比伸び率を適用して導出しており、基本シナリオではその平均値、強気シナリオでは80パーセンタイル値、弱気シナリオでは20パーセンタイル値を使用しています。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。

★8 出所:ワールド・ゴールド・カウンシル、ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。データは2020年1月1日-2025年11月14日。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。

〈用語集〉
弱気相場……有価証券の価格が下落し、ネガティブな投資家心理が強まる局面。正確な測り方は様々ですが、少なくとも2カ月にわたって広範な市場指数が高値から20%下落した場合、多くの人々から弱気相場と見なされます。この用語は、熊が爪で獲物を襲う際に腕を振り下ろすイメージから派生しています。

強気相場……市場の上昇局面を指し、一部では2年連続での上昇と定義されています。この用語は、雄牛がツノを振り上げるイメージから派生しています。

相関係数……相関係数は、2つの変数間の線形関係の強さの統計的尺度です。値の範囲は-1から+1で示されます。

ディベースメント取引……財政拡張や継続的な金融緩和で通貨の購買力が目減りしやすい局面に備え、金・コモディティ・インフレ連動債などの“通貨に強い”資産を分散して組み入れる投資戦略のこと。

上場投資信託(ETF)……ETFは、原資産(通常は指数)へのエクスポージャーを提供するオープンエンド型ファンドです。個別株と同様に、ETFは取引所で終日売買されます。投資信託とは異なり、ETFは空売りと信用買いが可能で、多くの場合は付随するオプションが存在します。

フェデラル・ファンド(FF)金利……銀行とその他の預金金融機関が(通常はオーバーナイトベースで)互いに資金を貸し借りする金利。

フィアット通貨……政府が法定通貨であると宣言した貨幣ですが、現物のコモディティで裏付けられていません。フィアット通貨の価値は、歴史的に、その材料として使用されている金や銀などの価値ではなく、需要と供給に連動しており、その国の信頼と信用のみに基づいて決まります。

国内総生産(GDP)……特定の期間に、その国で生産された財やサービスの総額を示す指標。一国の経済に関する健全性を示す重要な指標で、報道や政府によってしばしば引用されます。

インフレ……一定の期間での経済の財とサービスの価格における全般的な上昇で、通貨単位あたりの購買力の喪失につながります。インフレは多くの場合、通貨供給量が経済成長を上回るペースで増加するときに起こります。中央銀行は経済を円滑に運営するため、インフレの抑制やデフレの回避を目指します。

量的緩和(QE)……金利を低下させ、借入を促進し、経済活動を刺激するために中央銀行が国債を購入する例外的な金融政策措置。量的緩和は、短期金利がゼロか、ゼロに接近している場合に検討され、新規紙幣の印刷を伴うものではありません。量的緩和は、貸出と流動性の拡大を促すために、金融機関に資本を大量に供給することでマネーサプライを増加させます。

金のスポット価格……スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。

米国債……中央政府の債務であり、「政府証券」としても知られる国債は、一国の信用力と課税力に裏打ちされているため、債務不履行のリスクはほとんどないか、全くないとみなされています。

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