7月の注目点…日米の金利差に新たな方向感が出る可能性
米6月の失業率次第で7月FOMC利下げ再開の可能性も
まず注目されるのは、米独立記念日の関係でいつもの金曜日ではなく、7月3日の木曜日に発表される米6月雇用統計です。雇用統計のなかの失業率は、米国の政策金利のFFレートと一定の相関関係があり、さらにその失業率から過去10年の失業率の平均値(10年MA)を引いた「修正失業率」にすると、相関関係はより高まります。そんな修正失業率は、6月の失業率が予想通り4.3%に上昇した場合は、0.25%以上のFFレート引き下げの必要を示唆することになります(図表4参照)。
以上から、6月の失業率次第では7月末予定の次回FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ再開の可能性が強まり、米金利の低下に伴い日米の金利差が縮小することで米ドル/円の下落リスクが高まる可能性があるのではないでしょうか。
減税成立で「悪い金利上昇」=政権1期目の再現に注目
もう1つの注目は、いわゆるトランプ減税案の米議会の審議です。トランプ政権1期目に減税案が議会で成立すると、米金利が上昇、日米金利差は拡大に向かいましたが、それを尻目に米ドル/円は下落に向かうといった「悪い金利上昇」となりました(図表5参照)。では今回はどうでしょうか。
政権1期目のトランプ減税の議会の成立が、「悪い金利上昇」をもたらしたのは株価が鍵だった可能性がありました。米国の主要な株価指数は、2017年12月の減税案の成立から間もなく下落に向かいました。このように米金利が上昇する一方で株価は逆に下落すると、米ドル/円は株価に追随する形で下落したことから「悪い金利上昇」となったわけです。
それにしてもなぜ、この局面で株価は下落に向かったのでしょうか。NYダウやナスダック総合指数の90日MAかい離率は10%程度まで拡大すると、短期的な「上がり過ぎ」の懸念が強まりますが、当時はまさにそういった状況になっていました(図表6参照)。このため、減税成立を受けた米金利上昇は、「上がり過ぎ」修正のきっかけとなり、米国株の下落をもたらしたということだったのではないでしょうか。
実は、ナスダック総合指数の90日MAかい離率は先週、10%以上に拡大しました。その意味では短期的な「上がり過ぎ」の懸念が強まっている可能性があります。そういったなかで、トランプ減税の議会成立となり米金利が上昇した場合は、それが「上がり過ぎ」修正のきっかけとなり米国株は下落に向かう可能性もあるのではないでしょうか。もしもそうなると、すでに見てきた政権1期目の「悪い金利上昇」と同じような構図となり、米ドル/円は下落に向かうことにならないでしょうか。
7月の米ドル/円は140~147円で予想
以上のように見ると、日米の金利差は7月に新たな方向性が出る可能性があり、それは米金利低下に伴う金利差縮小ならもちろん米ドル/円の下落を示唆することになるでしょうが、もしも米金利上昇で金利差の拡大となってもそれを尻目にやはり米ドル/円は下落に向かう可能性があるのではないかと思います。
こういったことを踏まえ、7月の米ドル/円は、過去2ヵ月続いた142~148円のレンジを下放れる可能性が高いと思いますので、140~147円のレンジで予想します。
6/30~7/4の米ドル/円予想レンジ=142~146円
すでに述べたように、今週は7月3日の米6月雇用統計発表をきっかけに7月FOMCでの利下げ再開の可能性が高まるかが注目されます。また、トランプ大統領は7月4日の独立記念日までに減税案の上院での可決を要請していることから、これが米金利や米国株にどう影響するかも注目されることになるでしょう。今週の米ドル/円は142~146円のレンジで予想したいと思います。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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