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M&Aの基本:売り手と買い手の「価値のズレ」を理解する
M&Aの取引においては、売り手と買い手で企業の価値評価の方法に明確な違いがあります。
売り手はこれまでの実績に基づいて「年買法」などを用い、比較的安定した収益をもとに企業価値を算出する傾向があります。
一方、買い手は将来にわたるキャッシュフロー、すなわち会社が生み出す現金の流れに着目します。具体的には、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価する「ディスカウントキャッシュフロー法(DCF法)」を用いることが一般的です。
この違いがなにを意味するかというと、同じ企業であっても、見る角度によって価値は大きく変動するということです。売り手にとって納得感のある価格が、買い手にとっては割高に感じられることもあるのです。
高値での譲渡に必要なのは「最適な買い手の選定」
では、どのような買い手であれば、高く、かつスムーズに企業を譲渡できるのでしょうか。
まず1つ目に重要なのは、買い手企業に「優れた経営者」が存在することです。経営者の手腕次第で、企業の将来キャッシュフローは大きく変わります。
たとえば、カリスマ的なリーダーが新たに就任すれば、低迷していた企業でも短期間で利益を急伸させる可能性があります。これは、事業の持つ潜在能力を最大限に引き出す「経営力」が、企業価値に直結している証拠です。
次に注目すべきは「シナジー効果」です。M&Aによって2つの会社が一つになることで、単独では実現できなかった利益の創出やコスト削減が期待できます。
たとえば、営業チャネルの統合によって販路が拡大したり、仕入れ先の統一によってコストが抑制されたりといった効果が典型です。実際に経済産業省のPMIガイドラインにも、シナジー効果の具体例が多く掲載されています。PMIとは、M&A成立後に行われる統合作業であり、M&Aの目的を実現させ、統合の効果を最大化するために必要なものです。
3つ目の要素は、「資本コストの低さ」です。DCF法では将来キャッシュフローを割引率で現在価値に換算しますが、この割引率が小さいほど、最終的な評価額は大きくなります。
たとえば、自己資金での調達が難しく、高金利の借入に頼らざるを得ない中小企業では、割引率が高くなるため、企業価値は低く評価されがちです。一方で、大手企業や投資ファンドは、低金利での資金調達が可能であり、結果として高い評価を付けることが可能になります。
投資ファンドが高く買える理由とは?
ここで、特に投資ファンドの買収戦略に触れておきましょう。
ファンドが企業を買収する際には、自己資本ではなく、ほとんどが銀行からの借り入れで資金を調達します。現在のような低金利環境では、1〜2%程度の利率で多額の資金を集めることが可能であり、結果として非常に低い資本コストを実現できます。
これにより、同じ企業を評価した場合でも、ファンドは他の買い手よりも高く買収金額を提示することができるのです。もちろん、ファンドには永守社長のようなスーパーカリスマ経営者がいるわけではないため、シナジー効果や経営改善という点では限界がありますが、純粋な資本効率の面では圧倒的な優位性を持ちます。
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