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M&Aは「価格の交渉」ではなく「価値の見極め」が本質
多くの方は、M&Aの交渉を「売り手と買い手が合意することがすべて」と考えがちです。「お互いが納得すればよい」「このくらいの価格ならOKだろう」といった感覚的な進め方が、現場では少なくありません。
しかし、これは非常に危険な考え方です。
M&Aとは、本質的に「将来にわたって利益を生む企業を、いくらで買うのか」という投資判断です。ただの感覚や直感で金額を決めてはいけません。冷静かつ論理的に、将来その企業が生み出すキャッシュフローに基づいて価値を算出する必要があるのです。
株式投資とM&Aに共通する「価格と価値」のズレ
たとえば、トヨタ自動車の株価が現在1株1,000円だとします。あなたがこの会社の決算書を分析し、「今後成長して1株1,500円になる」と予測した場合、できるだけ安いタイミングで買いたいと考えるでしょう。800円で買えれば最高です。
ところが、仮に米国大統領が関税撤廃を発表し、株価が一気に2,000円に跳ね上がったとしたらどうでしょう? あなたは「この会社の適正価値は1,500円」と分析していたにもかかわらず、その熱狂に飲まれて2,000円で買ってしまうかもしれません。
ここで重要なのは、どれだけ価格が上がっても「自分が信じる価値を超えたら手を出さない」という冷静さが必要だということです。そしてこの考え方は、M&Aにおいてもまったく同じです。
M&Aにおける企業価値とはなにか?DCF法の考え方
企業価値とは、一般的に「将来にわたって企業が生み出すキャッシュフローの現在価値」として定義されます。
この考え方に基づいた代表的な算出手法が、ディスカウントキャッシュフロー(DCF)法です。この手法では、将来的に得られると予測される現金収入を現在価値に割り引いて合計します。
たとえば、企業が今後3年間で毎年500円ずつキャッシュを生むと予想されるなら、その合計を現在価値に換算し、「この企業の価値は1,500円」と判断されます。
ただし、この価値はあくまで予測に基づくものであり、絶対的なものではありません。そのため、実際の価格交渉ではこの価値に適切なディスカウントを加える必要があります。
「1,500円で1,500円を買う」M&Aは失敗する
M&A市場では、よく「企業価値に見合った価格なら買っても問題ない」とされますが、これは大きな誤解です。
たとえば、ある企業が1,500円の価値を生み出すと見込まれていたとして、1,500円で買収してしまうと、手数料・時間・リスクなどを考慮した場合、まったく利益が残りません。現実には、仲介業者への報酬が2,000万円かかるなど、コストも発生します。
それなのに価値と同額で買ってしまっては、結局「お金の移動をしただけ」で終わるのです。本来であれば、1,400円、あるいはそれ以下で買って、100円以上の利益を見込むべきです。
企業価値を見誤った事例に学ぶ
過去には、莫大な買収金額を投じたにもかかわらず、実際の企業価値が大幅に下回っていたという事例が複数存在します。5,000億円という巨額を投じたにもかかわらず、実際の価値はほぼゼロだったという結果に終わったことがありました。
おそらく投資銀行や監査法人が作成した算定書には、「将来1兆円の価値がある」と記されていたのでしょう。ところが、簿外債務やマイナス要因が隠されており、実際には利益どころか赤字だったのです。
つまり、算定書やエリートの肩書きに惑わされてはいけないということです。自分自身で企業価値を見極める目を持つことが、M&Aを成功させるための絶対条件です。
経営者・買い手が持つべき「価格と価値を見抜く力」
買収の意思決定において重要なのは、自社で企業価値を見抜く能力を持つことです。仲介業者や外部専門家の意見を参考にすることは大切ですが、最終的な判断は自分たちの手で行わなければなりません。
「この会社はどれだけ将来稼げるのか?」「その将来価値に対して、今いくらまで払えるのか?」という問いに真剣に向き合う必要があります。これを怠ると、高値掴みや将来的な損失を招きかねません。
M&A成功のカギは「安く買って、高く稼ぐ」シンプルな原則
M&Aにおける最も基本的な成功法則は、「安く買って、高く稼ぐ」という投資の原則です。
言葉にすると当たり前のように聞こえますが、実際の現場ではこの原則が無視されているケースが非常に多いのです。そしてその結果、多くの企業が買収に失敗し、無駄なコストだけを抱えてしまうのです。
企業価値を冷静に見極め、価格交渉に反映させる。このプロセスこそが、M&A成功の本質といえるでしょう。
まとめ:企業価値の理解が価格交渉の命運を分ける
M&Aにおいては、譲渡価格の交渉だけでなく、「その価格が企業価値に見合うかどうか」を判断できる力が必要です。仲介業者や投資銀行に丸投げするのではなく、自らが企業価値を見抜き、利益を得られるかを判断する責任があるのです。
企業価値をきちんと理解し、「高く売るためには安く買う」という投資の原則に則って交渉を行うことで、初めてM&Aを成功に導くことができます。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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