ここで「投資信託一気買い」だ!…コツコツ働いてきた元サラリーマン、退職金を手に挑んだ「大勝負」の果て【経済評論家が解説】

ここで「投資信託一気買い」だ!…コツコツ働いてきた元サラリーマン、退職金を手に挑んだ「大勝負」の果て【経済評論家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

サラリーマンや公務員が定年退職金を受け取ると、多くの場合、資産のバランスが一気に「現預金」に偏ってしまいます。そのような状況で、安易な考えでバランスを取ろうとすると、手痛い損失を被ることが…。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

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退職金を受け取ると、資産が預金に偏りバランスが悪く…

現役時代のサラリーマンは、余裕資金があれば住宅ローンを繰り上げ返済してしまうため、老後資金をあまり持っていない人も多いようです。しかし、そうなると退職金を受け取った瞬間に金融資産が銀行預金だけになってしまいます。

 

銀行預金は、元本が減ることは考えにくい一方で、インフレが来ると目減り(買えるものの量が減ってしまう)してしまう「リスク資産」なので、金融資産は銀行預金と株と外貨に分散させておいた方が安全です。

 

「株や外貨は値下がりするリスクがあるので、預金のほうが安全だ」と思っている人も多いようですが、「インフレが来て、銀行預金が目減りし、株価が下がり、外貨も値下がりする」可能性は大きくないので、最悪の事態を避けられるという意味では、分散させておくことが望ましいのです。

 

単純に分散させるだけでも意味がありますが、株や外貨はインフレに強いという性格があるので、最悪の事態に陥る可能性はさらに低いといえるでしょう。もっとも、実際には株や外貨の代わりに日本株や米国株の投資信託を買う方がさらによいでしょう。理由は後述します。

恐ろしい…「退職後の一気買い」に走る人

コツコツと働いてきたサラリーマンも、既定の年齢が来れば定年退職となります。いざ退職金を受け取ったときに、金融資産が預金だけであることに気付いて、多額の株式投信を「一気に買う」行動に出る人もいるようです。

 

しかし、それも危険です。たまたま退職日が株価や外貨の安い日であったなら、結構な儲けを手にすることができるでしょうが、たまたま退職日が株価や外貨の高い日であったなら、大きな損失を被るリスクがあるからです。実際に、そのような「賭け」に出て大損し、泣きを見た人も少なくないはずです。

 

したがって、株式投信は「時間をかけて少しずつ買う」ほうがリスクを減らすことができます。値段が高いときも安いときも少しずつ買うことになりますから、大儲けは狙えない一方で、大損のリスクも小さくなるからです。

退職金を狙う金融機関にも要注意

退職時は、金融機関、とくに銀行には要注意です。退職金が振り込まれたのを知ることができるので、「支店長室で支店長がご挨拶申し上げたい」などといってくる可能性があるからです。

 

銀行の支店長に深々と頭を下げられて「投資信託の購入をお願いします」などといわれると、気分が舞い上がってしまうかもしれませんし、そうでなくても支店長の依頼を無下に断るのも気が引けて、多額の投資信託を一気に買ってしまう可能性があるからです。

 

そういう場合は、冷静になりましょう。舞い上がる必要も恐縮する必要もないのです。支店長が頭を下げているのは読者に対してではなく、読者の退職金に対してなのですから(笑)。

現役時代から、余裕資金は「投信の積立投資」に回そう

退職金が出た時に一気に投資信託を買うのはリスクが大きいですが、退職金が出てから数年かけて毎月少しずつ買うとなると、しばらくは「金融資産のほとんどが預金」という期間が生じてしまいます。

 

それを避けるためには、現役時代から余裕資金は住宅ローンの繰り上げ返済に使うのではなく、投資信託の積立投資に使えばよいのです。

 

昭和の時代には、住宅ローンの金利が高かったので、余裕資金があれば住宅ローンの繰り上げ返済をする、ということが合理的だったのですが、最近の住宅ローンは金利が低いので、無理に繰り上げ返済せずに、退職金で一気に返済すればよいのです。

投信の積立投資が「メリット大」といえるワケ

投資信託というのは、プロが大勢の投資家から資金を集めて多くの銘柄の株を買い、儲かっても損してもそのまま(手数料を差し引いて)顧客に返す、というものです。したがって、少額の資金で多くの銘柄の株を少しずつ買ったのと同じ効果が得られるのです。

 

「100社の株を100円分ずつ買いたい」というのは無理ですが、投資信託ならそれと似たような効果が簡単に得られるのです。値上がりする株も値下がりする株も含まれているでしょうから、大儲けは狙えなくても大損のリスクは小さいでしょう。

 

毎月少しずつ購入する「積立投資」であれば、安い時も高い時も買うことになります。その面でも、大儲けは狙えなくても大損のリスクは小さいでしょう。

退職金はご褒美ではない…「社内預金の満期」と心得よ

退職前から積立投資を続けることで、退職直前の金融資産がほとんど株式投信になってしまうかもしれません。そうなると、不安に感じる人も多いでしょうが、ものは考えようです。

 

退職金は社内預金の満期だと考えればよいのです。「本当は自分の給料はもっと高いのだが、会社が勝手に一部を社内預金しているのだ。その満期が来るのが退職日なのだ」と考えるのです。そうすれば、退職日の直前、「自分は多額の社内預金を持っているので、積立投資をしてきた投資信託と併せて考えた時の自分の金融資産はバランスがちょうどいい」と考えることができるでしょう。

 

退職金を社内預金だと考えると、ほかにもいいことがあります。「永年勤続の褒美として退職金をもらったから、夫婦で世界一周旅行をしよう」などと考えずに済むからです。温泉旅行くらいは構いませんが、大切な老後資金ですから、あまり派手に使わない方が後悔する可能性は小さいでしょう。そのためには、「褒美ではなく社内預金の満期」と考えることが有益なのです。

 

本稿は以上ですが、投資判断等は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があります。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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