(※写真はイメージです/PIXTA)

65歳から受給開始となる「老齢年金」。受給時期を後ろにずらすことで、受け取れる金額を増やすことができる「繰下げ受給」。年金が増額することで、ゆとりのある老後を期待できるでしょう。しかしながら、想定外のデメリットも存在するようです。本記事では、山本さん(仮名)の事例とともに、年金の繰下げ受給によるデメリットについてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

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もう一つの誤算

さらに繰下げによるもう一つの誤算が、「加給年金」を受け取れなくなってしまったことです。加給年金とは、厚生年金に20年以上加入している人が65歳時点で65歳未満の配偶者がいる場合に、年間で約40万円を厚生年金に上乗せされて受け取ることができる制度です。

 

山本さんの妻は8歳年下で当時57歳。65歳からの5年間40万円を上乗せで受け取ることができたはずでした。しかし65歳から厚生年金を受け取らずに繰下げしたために、加給年金の支給開始も70歳からに……。70歳になって年金を受給開始したときに初めてその制度の存在に気がついたのです。

 

もとはといえば老後の安心を得るつもりでの選択でした。しかし、思わぬ負担増に加え、受け取ることができるはずの年金も失ってしまったことを、山本さんは猛烈に後悔しています。

年金はいつから受け取るのがいいの?

公的年金の繰下げ受給は、亡くなるまで受け取れる年金を増やすことになります。老後資金の準備が不十分で、できるだけ確実な収入を増やしておきたい人にとって、非常に有効でしょう。

 

特に、自営業などで厚生年金の加入期間が短く、年金受給額が少ない人が、老後の「長生きリスク」に備える目的で行うには最適な手段です。もともと年金額が少ないため、公的年金の非課税枠を上回っても課税される額も少なく済みます。

 

一方で、山本さんのように受給額がもともと多い人は、今回紹介した事例のように税金、国民健康保険料の負担が増えてしまう場合もありますので注意が必要です。

 

年金の繰下げは一つの手段だけではありません。年金制度の2階部分の厚生年金だけを65歳から先に受け取り、1階部分の基礎年金だけを繰り下げることで加給年金を65歳から受け取るという手段もありました。

 

このように公的年金制度は複雑で、受給する際には税金も関わり、とても複雑になります。いつから受け取ればよいかはその人の受給額などにもよって異なります。

 

もちろん、老後の資産形成が不十分であれば税負担が増えても繰り下げて受け取ることは老後の安心を獲得するための有効な手段です。「自分はどうしたらいいか?」という悩みは年金事務所へ相談に行ったり、FPから老後の家計シミュレーションを行ったり、社会保険労務士、税理士などの専門家を交えながら考えていくとご自身にとって最適な答えを見つけることができるでしょう。

 

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