今回は、銀行との取引において「信頼関係」が絶対とはいえない理由を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

銀行は「信頼関係」でお金を貸すわけではない

「銀行取引で一番大事なことは、『信頼関係』だと思っています」

と言われる方がおられました。

 

ちなみにその方は、銀行出身で、今は中小企業の財務担当者です。そして、その結果、借りなくてもいいカネを、借りてしまうわけです。

 

銀行にとったら、「信頼関係」という相手の思い込みを、ビジネスにうまく活用しているに過ぎません。しかも、その借りている先は、古巣の銀行なのです。

 

それは「信頼関係」ではなく、単なる「しがらみ」です。

 

「信頼関係」があるから、返せないときに待ってくれる。そんなことは絶対ありません。

「信頼関係」があるから、金利を下げてくれる。それも絶対にありません。

「信頼関係」があるから、いくらでも貸してくれる。ナシナシ、絶対にありません。

 

ビジネスとして有効だから、取り合ってくれるのです。なのに、いざというときに「信頼関係」が大事、という誤った感覚をお持ちの方が、まだまだいらっしゃいます。

銀行取引において武器となるのは「決算書」

そもそも、「信頼関係」とビジネスをごちゃまぜにしてしまうことが、間違っています。「信頼」と「信用」をはき違えているのです。

 

「信頼」は、信じて頼る。

「信用」は、信じて用いる。

 

「信用取引」という言葉はあっても、「信頼取引」という言葉はありません。少なくとも、ビジネスで用いるのは、「信用」です。その信じる根拠が、銀行であれば、「決算書」なのです。つまり、決算書をもとに信用され、取引しているにすぎません。

 

それを、「自分と銀行との信頼関係で取引されている」というのは、大いなる勘違いです。先方にとっては、“都合のいいお人好し”です。

 

銀行取引で一番大事なのは、「決算書」であり、それを武器に、ビジネスを有利に仕向ける「交渉」をすることです。そのために、強い「決算書」へと磨き上げることです。

 

自社の経理担当者に、「銀行取引で一番大事なものは何か?」聞いてみてください。

 

「信頼関係です」と言われたら、ちょっとドキッとしますよ。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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