元大手商社マン、ゆとりの老後の生活のはずが…
60歳で定年を迎えた元サラリーマンの田中一郎さん(仮名/68歳)は、妻の智子さん(仮名/66歳)とともにリタイア後の生活を送っていました。
一郎さんはもともと大手商社に勤務していました。収入が高かったことから、公的年金を60歳から繰上げして受給しても、夫婦合わせて月額18万円を受け取ることができるということがわかります。さらに退職時に受け取った退職金2,000万円と、これまでの貯蓄4,000万円を合わせた合計6,000万円の資産を用意できていました。
定年目前、一郎さんは「自分は役職的にも継続雇用は難しいだろう」と見込んでいました。また定年間際には、主に内部監査など社内を相手にする業務に就いていたため、取引先などに自己アピールする機会がなく、再就職をしても収入が大きく減る未来が見えていました。そのため、60歳で退職をすることを決意。月に18万円の定期収入と資産6,000万円があれば余裕で老後を生きていけると思ったのです。
もともと収入も高く、現役のころから杜撰な家計管理をしていても裕福に暮らすことができていた田中さん夫婦は、老後について具体的な計画を立てることはありませんでした。潤沢な老後資金があるのだから、当然ゆとりある暮らしができると信じていました。
時間があるから…ゴルフ、旅行、美食の楽しい老後
「これまで仕事が忙しくてなかなか妻を旅行にも連れていけなかったし……」我慢させていた分、老後はもっと楽しもうと、一郎さんは旅行や趣味に積極的にお金を使い始めます。
夫婦でゴルフを再開し、週に1度はコースに出る生活をスタート。さらに、旅行好きの智子さんの希望で、国内外の旅行に年に3回は出かけるようになりました。1回の旅行で使う金額は50万円~100万円程度にもなり、「いましかできない」と奮発。年間の旅行費用が200万円以上と支出が膨らんでいきます。また、食費もシニアの夫婦2人にもかかわらず月に15万円以上を使うなど、支出は年間で1,000万円近くにもなっていたのでした。
年齢を重ねてもとても仲のよい夫婦でしたが、こんな生活を続けていると毎年資産は大きく減り続けてしまい、5年が経過したころにはいつの間にか資産は3,000万円程度と、約半分に減ってしまっていたのでした。
「このままじゃもたない……」危機感を覚えた夫妻は節約しようと試み、ひとまず旅行やゴルフに行く回数を減らしてみるなどしましたが、預金残高はみるみる減りつづけていきます。
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