(※写真はイメージです/PIXTA)

軽い気持ちで、相続税・贈与税を回避するためにタンス預金をしておこうかな……と考えたことはありませんか? 現金だから足はつかないと思っていませんか? 税務署はそんなに甘くはありません。本記事では、富裕層・IPO税務を専門とする黒田悠介税理士(税理士法人Bridge 代表)が、「タンス預金がバレた場合の末路」を解説します。

そもそも「タンス預金」とは?

まとまった額の現金を金融機関などに預けず、家のタンスや金庫等に保管しておくことを通称「タンス預金」といいます。相続が発生すると亡くなった方の銀行口座はいったん凍結されて使用できなくなります。

 

現金があれば相続手続きにかかる急な出費の際に困らないですむなどのメリットもあり、タンス預金は多くの方がされていらっしゃいます。

 

もちろんタンス預金をすること自体は法的にまったく問題ありません。ただし相続税を逃れようと「悪い使い方」をすると、トラブルを招くことになります。

「娘のためにタンス預金を」という母の想い

母親は一人娘のために高い相続税の負担を減少させようと、生前に現金をせっせと家の金庫に貯めていました。

 

「お金持ちの〇〇さんの家は多額の現金を持っていて、それを相続申告しなくても税務署からお咎めがなかった」という話を聞いていたので、多少いけないことをしているとは思いつつも、累計約3,000万円を金庫に残しつつ、この世をあとにしました。

 

娘は母親から、「この現金はばれないから大丈夫」と生前に聞かされていましたので、申告をお願いした税理士にもその存在を隠して、相続税の申告を行いました。

 

それから一年半後、税務署から「税務調査に伺います」と電話がかかってきました。

 

調査官はなぜかその存在を知っているかのよう……

調査の当日、午前中は調査官も「この度はご愁傷さまでした。一般的な手続きなので……今日は猛暑ですね……」と和やかに雑談交えての話が進んでいたので、娘はほっと対応していたのですが、午後になると調査の雰囲気が一変してきました。

 

調査官「ところで、お母様は大きな買い物をなされる趣味などはございましたか?」

 

娘「いえ、質素な人だったのでそこまで派手な買い物はないかと思います」

 

調査官「自宅に金庫などはございますか? あったら見せていただきたいのですが?」
 

娘「(動揺しつつも)いえ、特にありません」

 

調査官「実はお母様の申告財産が、我々税務署が想定しているよりも数千万少ないので、家を調べさせていただきたいのです」

 

娘「……(え!? なんでバレているのだろう?)」

 

税務署の詰問が続き、これ以上隠すのはまずいと思い、「実は金庫に約3,000万円が……」と娘は調査官に白状しました。

 

税務調査の結果、最終的には漏れていた3,000万円の財産に対する相続税約600万に加え、約270万円の重加算税を払うことになりました。金銭的なペナルティがあったことはもちろんですが、詰問され精神的にも疲弊したので、こんなことなら、初めからきちんと申告していれば、と娘さんは大きく後悔しました。

 

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