“まだ受け取っていない遺産”でも申告は必要?税務署は「知った日=遺言の時点」として無申告加算税を請求。『知らなかった』では通じない、戸惑う甥が迎えた“税のタイムリミット”【税理士が解説】

“まだ受け取っていない遺産”でも申告は必要?税務署は「知った日=遺言の時点」として無申告加算税を請求。『知らなかった』では通じない、戸惑う甥が迎えた“税のタイムリミット”【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

伯父の遺言により、法定相続人ではない甥が思いがけず資産を受け取ることに。しかし申告は死亡から14ヵ月後となり、税務署は無申告加算税を課しました。甥は「相続を知ったのは9ヵ月後」と主張する一方、税務署は「遺言書を受け取った時点で知っていた」と反論。期限後申告としてペナルティの対象となるのでしょうか。

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相続税の起算点となる「知った日」

相続税法では、その申告期限を「相続または遺贈により財産を取得した者は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に、相続税の申告をしなければならない」と定めています。

 

「相続の開始があった日=亡くなった日」ではなく「その相続の開始があったことを知った日」が基準日となっているのですが、日付が明確な「亡くなった日」と違い、「知った日」という表現はだいぶんぼんやりしています。ぼんやりしているがゆえに争いになることもあるのですが、今回は、本人の主観も影響しそうなこの「知った日」について国税不服審判所が判断を下した事例(令和5年1月24日裁決)を紹介します。

申告遅れで無申告加算税が課されることに​

Aさんは亡くなる前に「法定相続人ではない甥に土地や建物、現金などを遺贈する」という旨を記載した遺言状を作成していました。遺贈というのは遺言によって、財産を相続人以外の人に引き継がせることをいい、遺贈により財産を取得した人を受遺者と呼びます。

 

Aさんが亡くなったあと、甥は遺言どおりにそれらの資産を取得しました。甥は相続人ではないのですが、財産を取得しているため相続税の申告義務が生じていました。しかし甥は、遺贈された財産の範囲や評価が確定していなかったこと、納税資金が手元になかったことなどの理由から、Aさんが亡くなってから14ヵ月目に相続税の申告をしました。

 

税務署から見れば、これは原則的な期間内に申告がされなかったものであり、ペナルティとして無申告加算税の賦課処分をすることとなります。しかし甥はこの処分に納得せず、両者は国税不服審判所で争うこととなりました。

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