(※写真はイメージです/PIXTA)

アパートオーナーが加入する火災保険。火災保険にはさまざまな「特約」を付帯することができますが、そのなかにある「代位求償権不行使特約」をご存じでしょうか? 本特約は、経営するアパート内で火災が起きてしまった際に、入居者とのトラブル回避に役立つものです。具体的にはどういった場合に役立つのか、本特約の内容について長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。

関連記事

■上も下も右も左も、全員いなくなった…手当たり次第壁を叩く騒音被害!経営するアパートにやってきた「迷惑入居者」の実録【不動産鑑定士兼税理士大家が解説】

「代位求償権不行使特約」とは?

代位求償権不行使特約とは、火災保険に付帯できる特約です。

 

損害保険会社が保険金を支払った場合、その原因となった加害者が判明していれば、加害者に対して損害賠償義務相当額を求償します。その求償をする権利(求償権)を不行使します(つまり求償しない)、という特約なのです。

 

上記の例でいえば、入居者の女性に対し、保険会社が請求を行わないということになります。ある損害保険会社の約款を紐解いてみます。

 

借家人に対する代位求償権不行使特約

第一条 この特約の適用条件
この特約は、被保険者以外の借家人が占有する建物を保険の対象とする場合に適用されます。
第二条 代位求償権不行使
この保険契約の普通保険約款およびこれに付帯された他の特約の代位に関する規定により、被保険者が借家人に対して有する権利を、当会社が取得した場合は、当会社は、これを行使しないものとします。ただし、借家人の故意または重大な過失によって生じた損害に対し保険金を支払った場合を除きます。

 

借家人に貸した建物を保険の対象とする特約であることがわかります。重大な過失による火災は例外です。重大な過失とはたとえば、石油ストーブに火が付いたままタンクに給油したなどの、故意に近い原因である場合です。

 

損害保険会社によっては、この特約を付帯しなくても代位求償権を行使しないとされているケースもあります。もし付帯した場合はすべての求償権が不行使とされるので、付帯を検討したほうが賢明です。

 

当然ながらその特約にはコストがかかります。損害保険会社にとっては本来求償できるはずのお金が入ってこないわけですから、契約者からの掛け金を割増します。

 

しかし割増の掛け金を支払ったとしても、入居者との関係悪化を回避し、経営上のキャッシュフローを安定させることになるため、付帯しておくことをお勧めします。

 

オーナーご自身が加入している火災保険に代位求償権不行使特約(名称は保険会社によって異なります)が付帯されているか、担当者に一度確認してみましょう。同時に、入居者には家財保険の借家人賠償責任特約を条件とすることも重要です。

 

 

長岡 理知

長岡FP事務所 代表

ファイナンシャルプランナー

 

関連記事

■上も下も右も左も、全員いなくなった…手当たり次第壁を叩く騒音被害!経営するアパートにやってきた「迷惑入居者」の実録【不動産鑑定士兼税理士大家が解説】

本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録