(※写真はイメージです/PIXTA)

アパートオーナーが加入する火災保険。火災保険にはさまざまな「特約」を付帯することができますが、そのなかにある「代位求償権不行使特約」をご存じでしょうか? 本特約は、経営するアパート内で火災が起きてしまった際に、入居者とのトラブル回避に役立つものです。具体的にはどういった場合に役立つのか、本特約の内容について長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。

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入居者が未加入のため、オーナー加入の火災保険を使うことに

この火災のケースでは、入居者はオーナーに対して賠償をする責任があります。しかし、オーナーとしてそう簡単にこの入居者に賠償請求をする気持ちになれません。

 

物件の立地が悪いこと、築古であることなどから、一度空室になるとなかなか埋まらないのです。そのようななか、20年と最も長く入居してくれているこの女性にはオーナーとして感謝もあるし、まだ住み続けて欲しいという思惑もあります。

 

300万円程度の損害賠償を請求することにより、この入居者との関係悪化を回避するため、オーナーが加入している火災保険を使うことにしました。

 

入居者の女性は申し訳なさそうにしていましたが、転居する意向もないため、オーナーとしては一安心……。しかし、問題はここから起こりました。

 

損害保険会社「オーナーに支払った保険金の分は入居者に請求する」

保険金を支払った損害保険会社は、オーナーに支払った保険金の分を入居者本人に請求するというのです。

 

驚いたオーナーが保険会社の担当者に訊くと、火災保険を使うと「代位求償権」を保険会社が取得したことになるということでした。つまり加害者(入居者)への賠償請求の権利が、オーナーから保険会社に変わるということです。入居者の支払い義務は残ったままなのです。

 

「そんなことはやめてくれ、出ていかれてしまう……」

 

オーナーとしては「これじゃ火災保険に入っている意味がないじゃないか」と憤慨してしまいます。これだけを聞くとひどい対応にも感じますが、損害保険会社の借家人に対する法律に則った手続きです。

 

しかし入居者に対して今回のような対処をされてしまうと、オーナーと入居者の関係悪化は避けられません。損害賠償金を支払ってもらえたとしても、おそらく退去されるでしょう。オーナーとしては優良顧客を失い、経営上のキャッシュフローを悪化させることに繋がります。

 

そこで重要になるのが「代位求償権不行使特約」です。

 

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本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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