築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
3.調停・訴訟
交渉でも解決に至らない場合は、裁判所における手続に移行することも検討する必要があります。
裁判所において話し合いをする調停は、裁判所の調停委員による客観的な意見も交えて協議を行うため、交渉のみで詰め切れない部分があったのみであればスムーズに和解に至ることもあり、有効な解決手段となることが考えられます。
他方で、解決案に関し、双方の考えに隔たりがある場合には、訴訟(裁判)により解決を図る必要があるでしょう。もっとも、賃料減額請求に関しては、訴訟の中で裁判所から和解の余地があるかどうかの意思確認や和解の打診をされることが多いです。
当事者としては、どこまで譲歩する余地があるのか、あるいはその余地がないのかをよく検討しながら対応することとなるでしょう。また、賃料額の相当性を裏付けるために不動産鑑定士の鑑定が必要となる可能性が高いです。この場合は鑑定料の負担も生じます。
なお、最終的に判決で賃料を減額する必要があると判断された場合には、賃料減額請求がなされた時点に遡って減額した賃料額であったとされるため、余分に受け取ったもとの賃料との差額分を返還しなければならなくなります。さらに、この差額分に対し、年10%の利息を付さなければなりません(借地借家法第32条第3項)。このようなリスクがあることにもご注意ください。
サブリース事業をすでに行っている人、今後検討する人
すでにサブリース事業を行っている方から、賃料減額請求への対策を講じることができないかご質問をいただく場合もあります。しかし、構造上、賃料減額請求を具体的に防止するような対策を講じることは困難なことが多いです。事案によっては専門家に相談することで具体的な対策を見つけられることもありますが、広く一般的に通用する対策があるとは言い難いところです。
このような状況である以上、賃料減額請求がなされた時点(問題が発生した時点)で速やかに専門家に相談し適切な対応を行うことこそが最大の防衛策になるともいえます。
また、サブリース事業をこれから始める方は、自ら経営戦略を立てサブリース事業が本当に必要であるか、契約内容や賃貸物件の管理状況に問題はないかを十分に確認したうえで臨みましょう。不動産は大きな買い物であるため、契約締結前の時点で専門家に契約書のリーガルチェックを依頼するなどして事前に防御をしておいて損はありません。
いずれにしても専門家のサポートを上手く利用しながら対応していくことが重要となるでしょう。
溝口 矢
法律事務所Z アソシエイト・東京オフィス
弁護士

