築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
所有アパートの駐車スペースに無断駐車されている!
自己所有の中古アパートを賃貸している建物オーナーのAさんは、建物に隣接する自己所有の土地に入居者用の駐車スペースを設けています。利用を希望する入居者に対しては、住居の賃料とは別に、有料で駐車スペースの使用を認めていました。
ところが、Aさんは入居者から、「自分が借りた駐車スペースのはずなのに、何者かが自動車を停めており、自分の車が駐車できない」と連絡を受けました。Aさんが該当する駐車スペースを確認したところ、契約車両のナンバーではない自動車が駐車されていました。
オーナーは駐車している自動車に見覚えがなかったので、数日間監視しましたが、誰かが自動車を引き取りにくる様子はありませんでした。
そこで、オーナーは、自らレッカー車を手配して自動車を動かそうと考えました。しかし、このような対応を勝手にとってしまってもよいのでしょうか。
勝手に撤去するとどうなる?
駐車スペースの所有者又は借主等の権利者であっても、裁判等の法的手続きによらず、自ら業者を呼んでレッカー移動をさせた場合には、原則として違法行為となります。これを「自力救済の禁止の原則」といい、法治国家である日本においては、法律に基づいて権利を実現しなければならないという考え方です。
もっとも、いかなる場合であっても、自力救済が認められないというわけではありません。
自力救済に関する2つの判例
最高裁昭和40年12月7日判決においても、自力救済について、「原則として法の禁止するところであるが、法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許される」としています※1。
※1 最高裁昭和40年12月7日判決(昭和38年(オ)第1236号)
実際、下級裁判所は、アパートの管理会社がアパートの共有スペースに放置してある大量の入居者の荷物を無断で撤去したことについて、管理会社が自ら入居者の承諾なく荷物を撤去したとしても違法ではない、と判断した例があります※2。
※2 横浜地方裁判所昭和63年2月4日判決
しかしながら、この裁判においては、
「共用部分たる本件動産設置場所についての原告ら側による違法な使用状態、これを是正するために催促ないし警告を重ねた被告の行為態様及び右警告後に片付けられた対象物件の価値の乏しさと量の少なさ等を勘案すると、被告による本件持去行為は自力救済禁止の原則に形式的には反する面があるものの、実質的には社会通念上許容されるものとして違法性を欠くと解するのが相当である」
と判示されているとおり、形式的には自力救済禁止の原則に違反するとされています。しかし、このケースでは具体的な事情に鑑み、実質的な違法性が認められないと判断されたにとどまります。
このように、自力救済はまったく認められないわけではありませんが、自力救済として認められるケースは極めて限られると思われます。そのため、自力救済の原則の例外に該当する可能性に期待し、自ら無断駐車されている車両を撤去することは控えるべきでしょう。

