築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
事業年度末投資におけるリスクと注意点
事業年度末投資は物件をじっくりと選定できる期間が短くなりがちで、その結果、物件の状態を見誤ってしまうことも少なくはなく、購入後にいきなり大規模な改修工事といった事態にもなりかねません。
改修という名目であっても、新たな資産の追加と認められればその工事は一時的な経費として計上することはできません。また、その工事代金が取得した金額の50%を超えてしまうと、物件全体に対して中古資産の耐用年数による減価償却が適用できなくなります。
そうなれば、せっかくの中古物件に対する税務上のメリットが失われてしまう恐れもあるため、不動産投資にあたっては物件を見定めるためだけではなく、資金調達のためにも計画的に進めていく必要があるといえるでしょう。
また、次年度に新たな借入を起こすことを検討している場合は、事業年度末の表面上の赤字が融資審査に影響を及ぼす可能性があることには注意しましょう。金融機関は審査の際に決算書などの帳票の表面上の利益を見ているケースもあります。
特に、減価償却費などの会計上の処理による赤字ではなく、実際にキャッシュアウトした費用による赤字の場合、金融機関は融資を慎重に判断する傾向があり、場合によっては融資を見送られ、物件購入の計画が先延ばしになったり、頓挫したりする可能性もあることを理解しておく必要があるでしょう。
中古アパート経営における事業年度末投資の戦略
中古アパートを対象とした事業年度末投資を行った場合、当初は収入よりも支出が上回り、手元資金の持ち出しが発生することも多く不安になるかもしれません。しかし、初年度でもほかの所有物件との損益通算などによって節税効果が期待できるとともに、翌年度以降は安定的な収益を確保し、大規模修繕のための備えにもなります。
このように事業年度末投資では、目先の利益よりもむしろ将来のための安定した収入に目を向け、長期的な目線で計画していきましょう。
田中 康雄
税理士法人メディア・エス 社員税理士
税理士

