築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
台風被災時、大家の「責任範囲」はどこまで?
アパート経営において、自然災害は避けて通れないリスクです。特に台風による被害が発生した場合、賃貸人である大家は、法律上、入居者や第三者に対して主に3つの責任を負う可能性があります。一つずつ確認していきましょう。
1.アパートの居室が壊れたときの賃貸人の修繕義務(民法606条)
■壊れた箇所を速やかに直す責任
賃貸人には、賃貸物を使用収益に適した状態に保つ義務(修繕義務)があります。台風によってアパートの居室の窓ガラスが割れた、雨漏りがする、といった場合、賃貸人は原則としてこれを修繕する責任を負います。入居者に責任がある場合を除き、自然災害が原因であってもこの義務を免れることはできません。修繕が遅れれば、後述する賃料減額の幅が大きくなるだけでなく、入居者との信頼関係にも影響を与えかねません。
2.アパートの居室が一部使用不能になったときの賃料減額(民法611条)
■使えなくなった部分に応じて家賃が自動的に減額される
2020年4月に施行された改正民法により、賃貸物の一部が滅失その他の事由により使用できなくなった場合、その使用できなくなった部分の割合に応じて、賃料は「請求を待たずに当然に減額される」と明確化されました。
たとえば、雨漏りによって一部屋が使えなくなった、ベランダが破損して出入りできない、といったケースが該当します。
この減額割合については、当事者間の協議で決めるのが基本ですが、その際に参考となるのが、日本賃貸住宅管理協会が公表している「貸室・設備の不具合による賃料減額ガイドライン」です。このガイドラインでは、「雨漏りによる利用制限」について5%~50%の減額割合の目安が示されており、客観的な基準として交渉の際に役立ちます。
3.アパートの屋根等が飛んで第三者に被害を与えた場合の土地工作物責任(民法717条)
■飛散物で隣人や通行人(第三者)に被害を与えた場合の賠償責任
台風の強風で屋根瓦や外壁の一部が飛散し、隣家や通行人に被害を与えてしまった場合、「土地工作物責任」を問われる可能性があります。
これは、建物の設置または保存に「瑕疵(かし)」、つまり通常備えているべき安全性が欠けていた場合に、建物の所有者が被害者に損害を賠償する責任です。土地工作物責任は所有者(賃貸人)にとって無過失責任とされているので、非常に重いものです。「通常想定される範囲の台風」に対して安全性を確保できていなかったと判断されれば、不可抗力とは認められず、損害賠償責任を負うことになります。

