築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
不動産投資における「事業年度末」の意義
事業年度末に取得した新たな投資不動産(事業年度末投資)から受け取る賃料は、決算書ベースで考えると事業年度末までのわずか数ヵ月分の収入しか期待できません。
一方で、新たに不動産を取得する場合には付随的に経費が生じるため、事業年度末投資の部分だけを切り取ると、初年度の決算は赤字になってしまうケースも珍しくありません。しかし、その翌年度以降の決算では、減価償却費や固定資産税以外に経常的に発生する費用は少なく、安定した収入が期待できます。
そのため、事業年度末に不動産投資を行うことは、短期的な収益よりも、長期的な収入の安定化や税制面でのメリットを享受するための有効な手段となり得ます。これにより、投資家は初年度の赤字を上手に活用し、翌年度以降に向けた安定した収益を見込むことができるでしょう。
事業年度末に投資を行う具体的なメリット
1.損益通算による節税効果
不動産を取得する際にはさまざまな出費が伴います。そのなかでも、事業年度内に所有権の移転が完了していれば、登録免許税をはじめ登記に要したすべての費用をその事業年度の経費にすることができます。
このほか、不動産取得税についても早々に納税通知書が手元に届けば、その事業年度の経費に含めることが可能です。しかし、残念ながら事業年度末投資では通知書が事業年度内に届くことは考えにくく、そうした場合には翌年度以降の経費になります。ただ、不動産取得税はその全額を一括で経費計上することができるため、将来的な節税効果が期待できるでしょう。
また、不動産投資の対象が中古物件の場合には、取得してすぐに気になる部分があると簡単な補修くらいはしておきたいものです。あくまでも物件の機能維持や原状回復のための軽微な修理であることが前提ですが、事業年度末までに作業が完了していれば、修繕費としてその事業年度の経費に含めることができます。
こうしてその物件の購入初年度に出費がかさんでくると、収入よりも費用が上回ってしまうことも想定されます。ただ、すでにほかの物件を所有していれば、それらの物件の不動産収支と相殺することができるため、事業年度末投資で生じた赤字も、場合によっては節税対策にもなります。

