相続人、税務署それぞれの主張とは…
【争点】財産の存在を知りながら意図的に申告しなかったかどうか
税務署が重加算税を課すためには、国税通則法に基づき「仮装・隠蔽」があったと認定される必要があります。「仮装」とは、実際には存在しない取引をでっち上げるなど、虚偽の事実を作り上げることを指し、「隠蔽」とは、実際に存在する財産や取引を意図的に税務当局に把握されないようにする行為を指します。どちらも「ごまかしたい」という意思が反映された行為であり、単なる計算ミスや思い違いでは「仮装・隠蔽」とは認められません。
今回の事例で問題となったのは、生命共済金について相続人が「本当に知らなかったのか」、それとも「知りながら申告しなかったのか」という点でした。
■相続人の主張
相続人は、「父の財産のすべてを把握していたわけではなく、生命共済金の存在も知らなかった」と述べ、意図的に隠した事実はないと主張しました。
この生命共済金に関する情報は相続税の申告の際に税理士に提出した資料のなかに含まれていなかったのですが、これもあくまで見落としによるものであり、故意ではなかったと説明。重加算税が適用される「隠蔽」ではないとしました。
■税務署の主張
税務署は、生命共済金の金額が決して小さなものではなく、相続人がその存在を知らなかったとは考えにくいと反論しました。
そのうえで、税理士に対してその存在をことさらに秘匿しようとしたとして「意図的に財産の一部を申告から除外しようとした」と認定。単なる申告ミスではなく「隠蔽」に該当するため、重加算税の賦課決定処分は妥当であると主張しました。
