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「確実と認められる債務」は控除できるが…
相続が発生すると、亡くなった方の財産は「プラスの財産」と「マイナスの財産」の両方が相続人に引き継がれます。プラスの財産には不動産や預貯金、株式などが含まれる一方、マイナスの財産には借入金や未払いの税金、医療費などが該当します。相続税の計算では、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた金額が課税対象となるため、債務が多ければそのぶん、相続税の負担も軽くなります。もちろん債務を負担することにはなります。
こうした仕組みを利用し、「銀行から借り入れをして不動産を購入すれば相続税対策になる」といった話を耳にしたことがある方もいるかもしれません。たしかに、金融機関からの借入金のように明確な債務であれば、相続税の課税価格から差し引くことが可能です。
しかし、すべての債務が自動的に控除できるわけではなく、相続税法では「確実と認められる債務」に限り、相続税の課税価格から控除できると規定されています。そのため、債務の存否や金額に争いがある場合、控除できるかどうかが問題となることがあるのです。
今回は被相続人が生前に解除した建築請負契約の違約金が、相続税の課税価格から控除できるかどうかについて、国税不服審判所がどのような判断を下したかをみていきましょう。
契約トラブルが解消しないまま被相続人が死去…
Aさんは、アパート建築のため建設業者と請負契約を締結しました。数ヵ月後にこれを解除したため建設業者から違約金の支払いを請求されました。契約書には契約解除に伴う違約金の定めがあったのですが、Aさんは「違約金が過大であり、消費者契約法に違反する可能性がある」として支払いを拒否していました。
この問題が解決しないままAさんが亡くなり、請負業者は相続人に対し、違約金の支払いを求めて訴訟を提起しました。これに対し相続人側も、「契約締結時に請負業者が十分な説明をしておらず、説明義務違反がある」として損害賠償を求める反訴を起こし、両者は対決することとなります。
こうした状況の中でも、相続税の申告期限はやってきます。相続人は、Aさんに関する相続税の申告にあたってこの違約金を債務として相続財産から控除しましたが、税務署はこれを認めず、この問題に関しては国税不服審判所の判断を仰ぐこととなりました。