日本にとって「教科書」となるか
Social Security制度の大規模な改革が最後に行われたのは1983年で、このときは満額支給開始年齢が65歳から67歳に引き上げられました。今後の対応としては、増税や受給年齢のさらなる引き上げが有力です。バイデン政権下では、富裕層への課税強化が議論され、トランプ氏も含めて「年金支給額の削減には反対」という点では一致しています。
一部では、年金基金の赤字分を他の一般財政予算から補填できるようにする法改正も模索されていますが、議会との合意形成は難航が予想されます。
日本の国会では、年金問題が根本的な議論すら進みません。一方、アメリカでは年金が重大な問題であることは広く認識されているものの、誰も積極的に行動しようとしないというジレンマに陥っています。
残された時間は、年金が底をつく2034年までの10年。しかし、今から行動しなければ間に合わないというのは、アメリカでも日本でも変わりません。
日本政府は、アメリカが今後どのような対応を取るかを注視し、自国の年金制度改革における「教科書」としようとしています。外交・防衛だけでなく、他国の対応を見てからでないと動けないという日本の政策スタイルのままでは、持続可能な制度の確立は難しいのかもしれません。
税理士法人奥村会計事務所 代表
奥村眞吾
