海外のオリンピックで日本が金メダル10個以上→日経平均上昇
日経平均株価には、「日本の金メダル数」との関係も見られる。
日本の金メダル数が2ケタに達した大会は、東京(1964年)、メキシコ(1968年)、ミュンヘン(1972年)、ロサンゼルス(1984年)、アテネ(2004年)、リオ(2016年)、東京(2021年)、パリ(2024年)の8大会だ。
このうち、建設投資の反動でオリンピック開催月の10月が景気の山となった1964年・東京大会と、日本が金メダルを獲れなかった1日の影響で下落した2024年・パリ大会を除き、日本の金メダル獲得数が2ケタに達した6大会では、日経平均株価は大会期間中にすべて上昇した。
ちなみにモントリオール大会(1976年)以降、日本の金メダルが10個に到達しなかった大会では、日経平均株価は1大会を除いてすべて下落となった。唯一の例外は2012年のロンドン大会。金メダルは7個と少なかったが、銀・銅を含めたメダル数が38個と当時の史上最多となり、マインドに大きくプラスに働いたと考えられる。
日本の選手が活躍し金メダルを10個以上獲得し、人々に元気を与え、マインド効果から日経平均株価が上昇すると思われる。
2024年・パリ大会は現地時間8月11日に閉会式が行われ、17日間の会期を終え閉幕した。「ジェンダー平等」の理念を反映し、参加した選手の数は史上初の「男女ほぼ同数」。200を超える国・地域と難民選手団の選手約1万1,000人が参加し、32競技329種目が実施された。
日本のメダル獲得数は、金20個、銀12個、銅13個で合計45個。金メダルはアテネ大会(16個)を上回り、メダル総数もリオデジャネイロ大会(41個)を超え、ともに海外開催の大会で史上最多を更新した。
パリ大会も、「大会7日目以外」は日経平均上昇
これまで、「海外大会で日本が金メダルを10個以上獲得すると、大会期間中の日経平均株価が上昇する」という傾向があったが、パリ大会では変動率▲4.3%と初めてマイナスになってしまった(図表1)。
パリ大会の開催期間中、日経平均株価の歴史的大波乱相場が生じた。8月5日に日経平均下落幅は歴代第1位、翌6日は上昇幅歴代第1位を記録したのである(図表2)。

日銀は7月31日の金融政策決定会合で、0~0.1%としていた政策金利(無担保コール翌日物レート)を0.25%に引き上げる追加利上げを決めた。事前に7月の利上げを見込む向きは少数派だった。変更発表日の日銀・植田和男総裁のタカ派的会見や、米国雇用統計の下振れ、急激な円高などが懸念材料となっていた。そこに8月2日の7月米国雇用統計の弱さなどが加わって、日経平均株価の大幅下落とその反動が生じたのである。
パリ大会での日本の金メダルは20個だった。しかし獲得した日は、柔道などのメダルラッシュがあった第2日から第6日の前半と、レスリングなどのメダルラッシュがあった第10日から最終日までの後半に分かれた。第7日から第9日の3日間は金メダルを獲得した選手はいなかった(図表3)。開催日の第7日から第9日の直後の日経平均株価の取引日は、第7日に対応する8月2日(金)で、第8日・第9日に対応する3日(土)、4日(日)は休場だった。

日本の獲得メダル総数(金・銀・銅の合計)を見ると、金メダルのなかった第7日から第9日の3日間では、銅メダル1個だった7日目の成果が一番少なかった。7日目に対応する、8月2日の株価下落幅は▲2,216円63銭(歴代第3位)だ。大会期間中の変動幅から8月2日の株価下落幅だけを除きパリ大会の変動率を計算すると、+1.5%のプラスになる。金メダル獲得の効果は、詳細に見ると2024年のパリ大会でも現れていたともいえよう。
オリンピック上位10ヵ国の「金メダル獲得」と「経済状況」
2016年・リオ大会で日本は金メダルを12個獲得し、ランキングは第6位。ランキング10位までの国の「金メダル数」と当時の「世界経済に占める名目GDPシェア」の相関係数は0.868と高い数字になった。選手育成などにお金をかけられる国が強いともいえるし、金メダルを獲るとその国の人々が元気になって、景気が良くなるともいえ、相乗効果が生み出されたようだ。
2021年に開催された「東京2020」(※)では、日本は金メダルを27個獲得し、ランキングは第3位。ランキング10位までの国の金メダル数と当時の世界経済に占める名目GDPのシェアの相関係数は0.864だった。
この傾向は、2024年・パリ大会でも続いた。日本は金メダルを20個獲得し、ランキングは第3位。ランキング10位までの国の金メダル数と、2023年(=当時最新)の世界経済に占める名目GDPシェアの相関係数は0.933と、数字が高まった(図表4)。

(※本来は2020年開催だったが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受け、本来の開催日程から1年延期された。開催延期は史上初。開催年は変わったが、「東京2020」という名称は保持された。)
宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
景気循環学会 副会長 ほか