「記念消費」のみならず、「記念結婚」「記念ベビー」まで…データを見れば一目瞭然「元号・世紀の変わり目」のスゴイ経済効果

「記念消費」のみならず、「記念結婚」「記念ベビー」まで…データを見れば一目瞭然「元号・世紀の変わり目」のスゴイ経済効果

約40年にわたり国内外の景気分析をしてきたエコノミスト・宅森昭吉氏が、景気や市場を先読みするヒントを紹介する本連載。今回は元号や世紀の変わり目が景気に与える影響について解説します。

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100年生きてもたった3回…「改元」は、めったにない一大イベント

今年(2025年)で100歳になる人でも、改元という時代の変わり目を迎えた経験は、1926年の「大正」から「昭和」、1989年の「昭和」から「平成」、そして2019年の「平成」から「令和」の3回にすぎない。

 

改元はめったにない一大イベントである。「平成」から「令和」の改元は、天皇の崩御による代替りではないので、自粛ムードがなかった。令和になった2019年5月は景気後退局面ではあったが、今上天皇陛下即位と改元は、新しい時代の到来で人々の気分を一新し、景気にとってもプラス材料になったと思われる。2019年の実質GDPは1~3月期から7~9月期まで3四半期連続して前期比プラス成長になった。

 

現在のGDP統計は1980年まで遡れる。1981年から2025年まで45年分、1~3月期の実質GDP前期比年率を高い順に並べると、第1位は平成に改元された1989年の+9.8%、第2位はミレニアム2000年の+7.1%である。

 

1989年の実質個人消費・前期比年率+11.9%、実質設備投資・同+18.5%、2000年の実質個人消費・同+2.4%、実質設備投資・同+15.9%と、どちらも個人消費、設備投資がしっかりした伸び率になっている。時代の変わり目の「記念消費」などの効果は大きいようだ。また、昭和から平成への切り替えや、2000年問題に対応するための設備投資も必要になったのだろう。

 

2019年の改元前には、「平成最後の伊勢神宮参拝」をはじめ、「平成最後の…」と銘打った旅行などのサービス、商品などが人気であった。4月1日の新元号発表に合わせた、「令和」の文字が入った飴などの商品も即日販売された。また、平成から令和への改元は事前に時期がわかっていたため、ゴールデンボンバーのように4月1日発表の新元号に合わせ、「新元号ソング」をどこよりも早く制作・発表・発売すべく制作の様子をレコーディングスタジオより生配信するアーティストもみられた。

 

令和の改元は2019年5月で四半期の変わり目ではなかったが、2019年4~6月期の実質GDP・前期比年率+1.8%とプラス成長だった。

景気に寄与した「2000年」のミレニアム婚、ミレニアムベビー

2000年当時は、ミレニアム婚、ミレニアムベビーが話題になった。婚姻件数の前年比の推移をみると、99年▲2.9%、2000年+4.7%、01年+0.2%、02年▲5.3%、03年▲2.3%である。+4.7%は1961年以降2024年の64年間で、1971年+6.0%、天皇・皇后両陛下御成婚の1993年+5.1%に次ぐ3番目に高い前年比である。

 

令和元年(2019年)の婚姻件数は+2.1%で7年ぶりに前年比増加に転じた。2019年5月の婚姻件数の前年同月比は+96.3%と、ほぼ倍増である。いわゆる令和婚を挙げたカップルが多かったことになる。2019年1~4月の実数の累計の前年同期比は▲14.4%と2ケタのマイナスで婚姻届を出すのを控えた様子だったが、5月分の大幅増加を加えると、2019年1~5月累計の前年同期比は+6.1%と増加に転じた。

 

出生数の前年比をみると、天皇・皇后両陛下御成婚の翌年1994年の前年比は+4.2%と高い伸び率になった。2000年前後の出生数の前年比の推移をみると、1999年▲2.1%、2000年+1.1%、2001年▲1.7%、2002年▲1.4%、2003年▲2.6%である。

 

1999年から2024年の26年間でプラスの伸び率になったのは5分の1の5回だけだ。2000年の他は2006年+2.8%、2008年+0.1%、2010年+0.1%、2015年+0.2%である。ミレニアム婚、ミレニアムベビーの影響が大きかったことがわかる。

 

昭和から平成への代替わりと異なり、平成から令和への改元は事前にスケジュールがわかっていたため、2000年当時と同じく、改元に合わせた令和ベビー誕生が期待されたが、新型コロナウイルス感染症がそんな期待をぶち壊した。

 

※2024年は概数 (出所)厚生労働省
[図表1]日本人の婚姻件数、出生数の前年比推移 ※2024年は概数
(出所)厚生労働省

景気ウォッチャー調査でも「改元」の景況へのプラス効果に期待の声

2018年から2019年の「景気ウォッチャー調査」では、先行き判断で「改元」にふれたウォッチャーが2018年10月の2名に対し、11月6名、12月17名、2019年1月30名、2月60名、3月97名、改元直前の4月111名と増えていた。

 

「改元」関連先行き判断DIをつくると2018年10月は景況判断の分岐点と同じ50.0と中立だったが、11月70.8、12月55.9、2019年1月は63.3、2月63.8、3月59.3、4月59.0と50.0を上回っていた。2019年1月のコメントには、「改元前後に当たり、平成最後、新元号最初の記念としてのモノコト消費が活性化すると予想している」という東京都の百貨店・販売促進担当の、「改元」の景況に与えるプラス効果を期待する声があった。

 

平成から令和への改元前後の2019年4月と5月で、それぞれ55名、43名が改元にふれ、「改元」関連現状判断DIは58.2、55.2とどちらも景気判断の分岐点の50を上回った。

 

 (注)◎「良」、○「やや良」□「不変」、▲「やや悪」、×「悪」 (出所)内閣府「景気ウォッチャー調査」より作成。
[図表2]2018年10月~2019年5月調査:「改元」関連コメント集計表 (注)◎「良」、○「やや良」□「不変」、▲「やや悪」、×「悪」
(出所)内閣府「景気ウォッチャー調査」より作成。

 

なお、2019年の「今年の漢字」は「令」が選ばれた。新元号が「令和」になったことから、その最初の文字を素直に選んだ人が多かった。

 

第2位は「新」。新天皇即位による新元号決定が、新たな時代の幕開けを告げた年だということで選ばれた。○○ペイといった新しい支払方法など新たな時代の到来を感じた人が多かったのだろう。

 

第3位は「和」。これも新元号「令和」からだが、こちらはラグビーワールドカップで初のベスト8に進出した日本代表の「ONE TEAM」などと絡めて選ばれた。「今年の漢字」からも改元のプラス効果が感じとれた。

 

 

宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
景気循環学会 副会長 ほか

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