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総選挙と日経平均にまつわる、あの有名な「アノマリー」
2024年10月1日に臨時国会が召集され、自民党の石破茂総裁が、衆参両院の本会議で第102代首相に指名された。石破総裁は、前日の9月30日に党四役とともに記者会見に臨み、「内閣総理大臣に選出されれば、直ちに組閣を行い、政権を発足させたい。新政権はできる限り早期に、国民の審判を受けることが重要であると考えており、諸条件が整えば、10月27日に解散総選挙を行いたいと考えている。これは全国の選挙管理委員会などの選挙準備の観点から、本日表明をさせていただくものだ」と述べた。石破総理は10月9日に衆院を解散し、衆院選を15日公示、27日投開票の日程で行った。これが最新の総選挙である。
総選挙と日経平均株価に関しては、「総選挙、解散日から投票日まで日経平均株価が上昇しやすい」というアノマリーが有名だ。1990年以降2024年までの12回の総選挙に関し、4つのケースで、このアノマリーを検証してみた。ただし、2024年の総選挙では4つのケースすべてで、このアノマリーは当てはまらなかった。
2024年9月27日の東京株式市場で日経平均株価は続伸し、終値は前日比903円93銭の3万9,829円56銭とこの日の高値で終えた。終値で3万9,000円を上回るのは7月31日以来およそ2ヵ月ぶりだった。
午後に自民党総裁選の投開票が始まり、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の継承などを掲げる高市早苗経済安全保障相(当時)が1回目の投票で得票数トップとなった。石破茂元幹事長が2位となった。株式市場の取引終了後に新総裁は2人の決選投票を経て、石破茂氏が選出された。
高市氏が新総裁に就任する可能性が意識され、高市氏が勝利した場合の金融緩和路線や政策などをいったん織り込みにいって日経平均を押し上げたが、高市氏が敗れたことで、株式市場には失望感が高まった。翌営業日の9月30日の日経平均株価は前日比1,901円01銭安になった。2024年の総選挙ではこの流れのなかで行われ、いつもと異なる結果になったのではないかと思われる。
過去12回の「解散→総選挙」までの株価を検証すると…
本稿では、
解散日の直前の営業日の日経平均株価の終値(A)
解散日の翌日の日経平均株価の終値(B)
投票日の直前の営業日の日経平均株価の終値(C)
解散日の翌日の日経平均株価の終値(D)
の4つの終値で、(C)―(A)、(C)―(B)、(D)―(A)、(D)―(B)の4ケースの組み合わせの差を求めた。
12回のうち11回上昇したのは、(C)―(A)、つまり「投票日の直前の営業日の日経平均株価の終値」―「解散日の直前の営業日の日経平均株価の終値」のケースだった。唯一低下したのは2024年の総選挙だった。
ほかの組み合わせをみると、(C)―(B)は10回上昇2回下落、(D)―(A)は7回上昇5回下落、(D)―(B)8回上昇4回下落となった。
なお、投票日の直前の営業日の日経平均株価の終値(C)―解散日の翌日の日経平均株価の終値(B)の2回下落したケース(2003年と2024年)では、どちらも自民党は単独で過半数を獲得できなかった。2003年の総選挙では、自民党と公明党、保守新党の与党3党で絶対安定多数を維持したものの、自民党は10議席を減らし、与党全体としては12の議席減となった。なお、選挙後に自民党が保守新党を吸収し、単独過半数は確保した。
一方、「景気ウォッチャー調査」のコメント数のほうは…
「景気ウォッチャー調査」での、政治を景気判断の材料とするコメント数は、24年7月調査の現状判断0名、先行き判断3名のように通常は少ない状況だ。しかし、2024年10月調査では、総選挙での与党過半数割れの影響が出て、政治を景気判断の材料とするコメント数が現状判断5名、先行き判断は50名と3カ月前の16.7倍と多くなった。2024年12月調査で現状判断4名、先行き判断9名とどちらも1ケタに減少した。
先行き判断では「選挙の結果により政治の混乱が予想され、警戒感からしばらくは庶民の消費意欲が鈍化すると予想している」という九州のタクシー運転手のコメントや、「政治の動き、金利の動向、物価上昇等が懸念される」という四国の建設業経営者のコメントに代表されるように「やや悪くなる」と判断したコメントが多く、10月の「政治」関連先行き判断DIは38.5とかなり弱い数字になった。
日銀は選挙に対し「中立的立場」を維持
また、日銀の金融政策は政治から中立であることが求められることから、これまで衆議院の解散から総選挙投票日までの間に政策金利の変更は実施されていない。
新しい日本銀行法が1998年4月1日に施行されるまで、日銀の金融政策は不定期に臨時金融政策決定会合を開催し決定していた。事前に日程が公表されることはなく、金融政策の変更が近いと判断されると、金融マーケットでは、日銀総裁の海外出張や地方出張のスケジュールが臨時金融政策決定会合の日程を予測する上で注目された。さらに、現憲法下では衆議院解散日と総選挙の投票日の選挙期間中に政策金利が変更されたことがないということも、臨時金融政策決定会合の日程を予測する上で、重要な情報だった。
現在まで、衆議院解散日と総選挙の投票日の選挙期間中に政策金利が変更されたことはないため、選挙に対し中立的立場が維持されてきたと言えるだろう。2024年の総選挙では、10月30日・31日に金融政策決定会合の直前の10月27日に投票日が設定されたため、事前にアノマリーが維持されることが確定していた。
※ 本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
景気循環学会 副会長 ほか
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