「好きな球団の優勝」はファンの消費マインドに好影響
プロ野球シーズン終了後の『日銀短観(2024年12月調査)』で、大企業・製造業の業況判断DI(「良い」−「悪い」割合)は+14、大企業・非製造業の業況判断DIは+33で、ともに「良い」超になった。
両者を合わせた大企業・全産業の業況判断DIは+23で、前回から横ばいだが、1年前の2023年12月調査を2ポイント上回って、景気が緩やかながら改善傾向であることが確認された。
2024年読売新聞のスポーツに関する全国世論調査で、プロ野球チームのなかで好きなチームは、巨人が33年連続第1位だった。好きな球団の優勝は、ファンの消費マインドを高める効果があろう。人気球団の場合、他の球団に比べファン数が多く、その影響力も大きいからだ。
「人気球団が優勝した年」のほうが、12月の日銀短観は回復
高度経済成長終了後の1973年以降2024年までの52年間で、その年のセ・リーグ優勝チームが決まった直後の調査である『日銀短観(12月調査)』を見ると、大企業・全産業の業況判断DIの前年差変化幅の平均はちょうど0.0ポイントである。大企業・全産業の業況判断DIを使うのは、1973年にはまだ中小企業・業況判断DIがなかったからだ。
人気球団である巨人の優勝年では、DIの改善10回・不変1回、悪化10回だが、前年差変化幅の平均は+5.5ポイントの改善。人気2位・阪神の優勝年では、改善3回・悪化1回で、前年差変化幅の平均は+3.3ポイントの改善だ。残る4球団の優勝年の平均は▲4.7ポイントの悪化、改善12回、悪化15回だ。
人気チームが優勝した年のほうが、平均的に見て、『日銀短観(12月調査)』における大企業・全産業の業況判断DIの前年差変化幅が良くなる傾向がある(図表1)。

「リーグ優勝か、日本一か」でも景気の回復度合いは変わる
一番人気の球団である巨人が日本一になった年の平均は+11.3ポイントと2ケタの改善。一方、セ・リーグで優勝したものの日本一になれなかった年では、平均+2.0ポイントとわずかな改善にとどまる(図表2)。2024年がこのケースだ。
日本シリーズ2024の覇者は、3位から下剋上を果たしたDeNAだ。クライマックスシリーズに敗れ日本一になれなかったものの、巨人はセ・リーグで優勝でき、『日銀短観(2024年12月調査)』における大企業・全産業の業況判断DIの前年差変化幅はちょうど+2になった。巨人の“但し書きつきセ・リーグ優勝”は、緩やかな景気回復と整合的だった。
宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
景気循環学会 副会長 ほか