米ドル「146円台」に下落、ヘッジファンドの戦略転換が背景か…今週の予想レンジは〈146~150円〉【国際金融アナリストが解説】

3月11日~3月17日の「FX投資戦略」ポイント

米ドル「146円台」に下落、ヘッジファンドの戦略転換が背景か…今週の予想レンジは〈146~150円〉【国際金融アナリストが解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

先週は一時146円台まで下落した米ドル/円。これは日米金利差縮小などによるものとみられています。米景気減速の懸念もあり、今週予定されている2月の米経済指標発表に注目が高まります。米ドル/円は、今後どう推移していくでしょうか。マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が解説します。

今週の注目点…円「買われすぎ」修正、日米金利差の行方

2024年までは、CFTC統計の投機筋の円買い越しは5万枚以上に拡大することが珍しいといえるものでした。これは、低金利の円買いにはおのずと限度があったためと考えられます。そういった観点からすると、先週にかけて円買い越しが13万枚以上に拡大したことは、円の「買われすぎ」懸念がかなり強くなっている可能性も感じさせるものです(図表5参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表5]CFTC統計の投機筋の円ポジション(2010年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

今回とは逆に、円売りが極端な「行き過ぎ」となったのは2024年7月にかけて161円まで米ドル高・円安となった局面でした。極端な「行き過ぎ」は、別な言い方をすると「バブル」でしょう。この円売り「バブル」が破裂すると、米ドル/円はほんの1ヵ月で約20円もの大暴落を演じるところとなりました。では今回は円買い「バブル」の反動で急激に円安へ戻すことにならないか。

 

2024年7月にかけての161円までの米ドル高・円安は、日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小と逆行する形で起こったものでした(図表6参照)。

 

このため極端な円「売られすぎ」の反動に、この日米金利差とのかい離の修正も重なったことから米ドル安・円高への反転は急加速することになったと考えられます。これが、円売り「バブル」破裂が米ドル/円の大暴落をもたらした基本的なメカニズムと考えられますが、この点が今回は違うのではないでしょうか。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表6]米ドル/円と日米10年債利回り差(2024年1月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

これまで見てきたように、先週までの米ドル/円の下落は基本的に日米金利差縮小に沿ったものでした。そして、それをHFなどの投機筋の米ドル売り・円買いが主導したということでしょう。

 

そんな投機筋の米ドル売り・円買いには「行き過ぎ」、場合によっては「バブル化」の懸念も出てきました。その修正に伴う米ドル買い・円売りがどれだけ拡大するかは、日米金利差拡大に伴う米ドル高・円安のペースも大きく影響するところとなりそうです。

 

日米金利差がこれまでの縮小から一転して急拡大に向かわない限り、投機円買いがかりに「バブル」としても、その修正が米ドル高・円安をもたらす程度は限られたものになるのではないでしょうか。

 

今週はCPI(消費者物価指数)など2月の米経済指標発表が予定されています。それらを受けて、最近にかけて徐々に広がり出した米景気減速への懸念を見極めることになるでしょう。

 

ただ重要なことは、先週独金利の急騰が注目されたように、これまでは基本的に米長期金利と連動してきた日独など先進国の長期金利が、日米金利差からかい離して大きく上昇するようになってきた点です(図表7参照)。

 

この背景には、トランプ大統領の「米国第一主義」においては、米国以外の国は経済・安全保障など自己責任が強くなり、それが財政拡張につながるということがあるのではないでしょうか。そうであれば、日独などの金利上昇の流れは基本的に続くと考えられ、日米金利差は縮小しにくいと思います。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表7]独米の10年債利回りの推移(2024年12月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

投機筋の円「買われすぎ」の修正リスクはあるものの、日米金利差拡大が限られるなら米ドル高・円安への戻りも限られるでしょう。それらを踏まえ、今週の米ドル/円の予想レンジは146~150円で想定したいと思います。

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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