早期退職をした友人に触発され、会社を去ることに
思わぬ財産を得て、心に余裕ができた松本さん。60歳まで仕事を頑張って、その後はリタイアしよう。そんな計画を立てていました。
そんな折、同じ年の友人から仕事を辞めたと打ち明けられました。聞けば、投資で得る運用益をベースに足りない分はアルバイトで稼ぐ「FIRE」を実行することにしたというのです。
正確にはサイドFIREと呼ぶこと、そのために以前から準備をしてきたことを友人は力説していましたが、当時の松本さんはそんなことに興味はありません。ただ、「仕事を辞めた」という事実が猛烈に羨ましかったのです。
「こんなにお金があるんだ、どうせ退職金もほとんどもらえないんだ。別の会社に再就職するか、アルバイトで生きていけばいいじゃないか」
年金をもらえるまで何とか乗り越えればいい、ストレスのたまる仕事からとにかく離れたい……。
大金を手にしたことで、もともと低かった仕事へのモチベーションは最低限まで下がっていました。そうして、松本さんは半ば勢いで辞表を提出したのでした。
「まさかこんなに早く仕事を辞められるなんて」
ほんの少し前まで考えられなかった選択に、松本さんは幸せを噛みしめていました。
