激務の末に手にした高年収、自分のために使いたいという本音
「20代のころは、終電で帰って休日は資格の勉強をするような生活でした」
都内の専門商社で働く稼田さん(仮名・34歳)は、現在の年収780万円を手に入れるまでの道のりを淡々と語ります。若いうちに身を粉にして働き、自腹でビジネススクールにも通いました。その努力が実を結び、30代に入ってようやく金銭的な余裕とプライベートの時間を確保できるようになりました。
「今は広めのマンションに1人で住んで、週末は好きな車でゴルフに出かけたり、美味しいものを食べに行ったりしています」
誰にも縛られず、自分が必死に稼いだお金を自分のためだけに使う。稼田さんにとって、今の生活はまさに思い描いていた理想の形でした。当然、周囲からは「そろそろ身を固めたらどうか」と結婚を勧められますが、彼にその気は一切ありません。
「結婚したら、間違いなく今の生活レベルは維持できなくなります。自分が努力して稼いだお金を、なぜ赤の他人に管理されなきゃいけないんですか」
稼田さんが結婚を強く拒絶する背景には、職場の既婚の同僚たちの姿がありました。
同僚の「昼食はワンコイン」の姿を見て独身を決意
稼田さんの同僚の多くは既婚者で、彼と同じように高い年収を稼いでいます。しかし、彼らの日常は稼田さんが思い描く「豊かな生活」とは程遠いものでした。
「同僚たちは妻に財布を握られて、月に3万円のお小遣いでやりくりしています」
自分と同じく年収800万円近く稼いでいるはずの彼らが、昼休みになると500円のワンコイン弁当を食し、飲み会の誘いも「妻の許可が下りないから」と断る姿を見て、稼田さんは愕然としました。
「奥さんは家計の管理という名目で自分磨きやランチにお金をかけているのに、稼いでいる張本人がみすぼらしい思いをしている。そんなの、ただのATMじゃないですか」
もし結婚して子どもができ、マイホームを買えば、自分のためにお金を使うことなど一生できなくなります。
「豊かな生活を手に入れるために努力してきたのに、結婚のせいでまた我慢の生活に戻るなんて本末転倒です。僕には、自分の人生を他人に差し出すような結婚のメリットがまったく理解できません」
稼田さんは、これからも誰にも財布を握らせることなく、自分だけの人生を謳歌すると決めています。
子育てやマイホームの壁を越えられても、あえて結婚しない選択
稼田さんのように、結婚生活に必要なハードルを越えられるだけの年収を持ちながら、自分の自由やお金を守るためにあえて独身を貫く男性は増えています。
SMBCコンシューマーファイナンスの「婚活・結婚に関する意識・実態調査」によると、未婚者が「子どもを1人育てられると思う世帯年収額」の平均は732万円、「マイホームを購入できると思う世帯年収額」の平均は863万円でした。
稼田さんの年収780万円は、これらの高い世帯年収ハードルに1人で手が届く金額です。しかし、家計を維持するためには稼いだお金のほとんどを「家族のための固定費」として差し出す必要があります。お小遣い制という日本の多くの家庭で見られるシステムは、自分の稼ぎを自分でコントロールしたいと考える高年収の独身男性にとって、拒否反応を示す原因となっています。
経済的な理由で結婚を「できない」人がいる一方で、稼田さんのように金銭的な余裕があるからこそ、その恩恵を手放したくなくて結婚を「しない」という選択。これもまた、多様化する現代のライフスタイルの1つの到達点といえるでしょう。
[参考資料]
SMBCコンシューマーファイナンス「婚活・結婚に関する意識・実態調査」
