親から受け継いだ土地を守るため、30年間コツコツと預金を貯めてきた美穂さん(65歳)。しかし、母親の相続で発生する 2億7,000万円円の相続税 により、その貯蓄がほぼ消えてしまうことに。美穂さんは「土地を守るのが務め」といいますが…。本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が相続税対策と資産の残し方について解説します。
評価が小さくなる財産
土地が多いというのは財産としてはよいのですが、美穂さん夫婦が相続された不動産は貸宅地が9割で、地代が入るとはいえ、自分たちで使えるわけではないので、自由度は低いと言えます。
よって今回の納税方法として提案したのは、貸宅地を処分して相続税に充当することです。借地権は70%で、底地は30%の評価で申告、納税しますが、売買価格が相続評価以下にしかならない場合は、売買価格を時価として申告評価にできるのです。
相続税を節税しながら、納税資金にすることで預金や生命保険金を残すことができ、美穂さん夫婦の相続対策のために使えるお金にできるのです。美穂さん夫婦はこの機会に貸宅地の一部を処分して納税に充てるようにし、貸宅地を整理していくことにしました。
財産の持ち方として、相続税を払うための財産ではなく、評価の低い財産にすることで無理なく残していける財産にすることがこれからの対策になります。
相続実務士のアドバイス
●できる対策
貸宅地を売却して納税資金とする。
相続評価以下の売却代金であれば、時価申告をして相続税を減らす。
●注意ポイント
相続評価以下であれば、売買代金を時価とでき、評価よりも低い評価で申告できます。
その際は、申告期限までに売買契約を締結しておく必要があります。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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