親から受け継いだ土地を守るため、30年間コツコツと預金を貯めてきた美穂さん(65歳)。しかし、母親の相続で発生する 2億7,000万円円の相続税 により、その貯蓄がほぼ消えてしまうことに。美穂さんは「土地を守るのが務め」といいますが…。本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が相続税対策と資産の残し方について解説します。
30年前に相続
美穂さん(65歳)の父親は30年前に亡くなり、母親と養子になっている美穂さんの夫の3人で相続をしました。父親は先代から相続した多くの土地があり、ずっと土地を守ってきたと言えます。
亡くなったときの父親の財産は自宅と2棟のアパート、その他も多くの土地を所有していました。財産を半分相続した母親は納税はなしですが、財産の半分を相続した美穂さんは相続した預金の全部を納税に充てました。それでも父親は預金を残してくれたので、相続税の納税を乗り切ることができました。
二次相続
次は母親の相続を控えているため、母親も美穂さん夫婦も、アパートの家賃や貸宅地の地代はなるべく使わずに30年間、ずっと貯めてきました。普段の生活費は美穂さん夫婦が働いた収入で賄ってきました。
二次相続の相続税の納税のため、預金をし、生命保険にも加入し、コツコツと貯めてきたといいます。父親は50代で早く亡くなったのですが、母親はそれから30年長生きし、80代で亡くなりました。
母親の財産は、父親から相続した不動産や貯めてきた預金で、7億円以上となり、相続税は2億7,000万円となりました。30年間コツコツと貯めてきた預金と生命保険で2億5,000万円になっていましたので、納税のめどはついていますが、その後、自分たち夫婦の対策をどのようにすればいいかという相談でした。
30年貯めたお金がなくなる
美穂さんは両親の姿を見て育っていますので、土地をずっと守っていくのが務めと思ってきたということです。母親の相続税も30年間貯めてきた預金と生命保険金で納税できると思っていますが、これでは、土地は残るが30年間貯めてきたお金を相続税で払い出して残らないということになります。
美穂さんやご両親にすれば、土地を守ることが第一とすれば当然のことかもしれませんが、客観的にみればとても残念なことだと言えます。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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