「相続プラン」ができるまで
正さんご夫婦から委託を受けた「相続プラン」がどのように作られたか、説明します。
1. 相続人の確認…基礎控除がわかる
最初に、相続人を確認し、家系図を作成します。相続人の確認をすることで、「相続税の基礎控除」が算出できます。
基礎控除の確認は「相続プラン」提案の前提条件となります。
「相続税の基礎控除」=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)なので、4人なら5,400万円。財産の総額が「基礎控除額」を超える場合と超えない場合とでは対策の内容は大きく変わります。
2. 財産の確認、現地調査、評価
不動産は、名寄せ帳、固定遺産税納税通知、固定資産税評価証明書などの書類を通して、土地と建物の所在地・面積などを確認します。共有者がある場合は、登記簿謄本で共有の割合を確認するようにします。
預金は通帳の残高を確認します。株式は証券会社の預かり証、保険は保険証券で確認するようにします。同族会社の株や法人への貸付金がある場合も評価をして財産に加えます。アパートや住宅のローンなどの負債は金融機関の返済表などの明細で確認します。
不動産、動産、負債を確認したあと、財産評価をします。不動産については面積や利用状況により評価が変わるため、必ず現地調査をし、簡易測量をし、利用状況を確認します。
プラス財産からマイナス財産を引き、基礎控除を引いた課税財産を算出して、相続税の予想額を計算します。さらに不動産の共有、担保設定、連帯保証など、課題を整理します。
3. 経済面の対策1:分割金、納税資金を確保する
相続税の予想額を出し、財産分与を考えると相続時にどれくらいの現金が必要となるかは、ある程度想定できます。現在の財産のなかで、すでにそれに見合う現金や有価証券などの動産がある場合は大きな不安はないといえるでしょう。
しかし、不動産はあるが必要とされる現金がないこともあるでしょう。それでも財産分与の分割金や納税資金は必要ですから、そのための用意は必要です。
相続になってもお金は急に増やせないということです。
こうした場合の対策を考えたとき、相続税の予想額や財産分与を目安とした生命保険に加入しておき、分割金・納税資金を準備することもできます。あるいは、売却に時間がかかることもあるので、不動産は早めに売却をして換金しておくことも方法の一つです。
相続になったら分けられる形に換えておくことも対策となります。
また、まとまったお金がない、作れない場合でも、賃貸事業などの安定収入があれば、分割金や納税に充てることができるといえます。ただし、収益が安定した賃貸事業にしておくことが大切です。スタートするときも、当然ながら毎年収益のバランスを確認して、負担がない優良な賃貸事業にしておくことが、相続のときのプラス財産につながって、よいでしょう。
3. 経済面の対策2:積極的な節税対策をする
相続税がかかることがわかれば、次は節税対策を、ことになります。節税対策の方法はいくつもありますが、個々の事情に合わせたオーダーメードの提案が必要になります。
主な生前対策となるのは「現金」と「不動産」を活用した対策であり、「財産を減らす対策」の贈与や、「相続税の評価を下げる対策」の購入、資産組み替え、土地活用などの不動産対策などがそれにあたります。
【贈与】
・配偶者の特例を利用する…自宅の贈与は2,110万円まで無税
・現金、不動産を贈与する…生前に財産の前渡しをする
【建物】
・現金を建物に替える…建物評価は半分以下になる
【購入】
・現金で不動産を購入する…不動産で評価を下げる
【組替】
・土地を売却、賃貸不動産に買い替える…立地や形を変えて事業を継続する
【活用】
・土地に賃貸住宅を建てて賃貸事業をする…確実に節税できる
【法人】
・賃貸経営の会社をつくる…現金の資産増を回避する
相続人が増えれば基礎控除が増えるので、養子縁組で相続人を増やすことも対策の一つです。孫や嫁と養子縁組をすることが一般的で節税の価値は出ますが、あとで相続人間の感情的な問題にも繋がりやすくなるため、事前に同意を得ておくなど、配慮をすることが必要でしょう。
