セブン‐イレブンはなぜ成功したのか「日本では使えない」アメリカのマニュアルに頼らず、日本初のコンビニが生み出したイノベーション【経済学の専門家が解説】

セブン‐イレブンはなぜ成功したのか「日本では使えない」アメリカのマニュアルに頼らず、日本初のコンビニが生み出したイノベーション【経済学の専門家が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

日本を代表するコンビニエンスストア企業・セブン‐イレブン。元はアメリカのサウスランド社の業態でしたが、日本型に適合させることで爆発的な成功を収めました。本稿では、北海道大学大学院経済学研究院准教授の満薗勇氏の著書『消費者と日本経済の歴史 高度成長から社会運動、推し活ブームまで』(中央公論新社)より詳しく解説します。

日本型コンビニの革新性

鈴木敏文が日本のセブン‐イレブンで実現した流通革新の要点は、1. 多頻度小口配送、2. 魅力的な商品開発、3. POSシステムによる単品管理、という3点に整理できる(矢作敏行『コンビニエンス・ストア・システムの革新性』日本経済新聞社、1994年、川辺信雄『新版 セブン-イレブンの経営史――日本型情報企業への挑戦』有斐閣、2003年)。

 

まず、店舗への商品の納入では、多頻度小口配送の実現が不可欠であった。コンビニエンス・ストアには、在庫スペースの小さい小型店舗という制約があり、そこに年中無休で欠品のない定時配送が求められる。セブン‐イレブンでは、既存の問屋を活用しつつ対応したが、当初はメーカーごとの大ロット配送という商習慣が当然とされていた。その結果、セブン‐イレブン1号店は、開店から1ヵ月後、「お店の2階の居間が在庫の山であふれて大変です」と報告されるような状況に陥ってしまう(鈴木敏文『挑戦 我がロマン――私の履歴書』日経ビジネス人文庫、2014年)。

 

以後、鈴木はメーカーや問屋を説得しながら、窓口問屋による集約化と、商品グループごとの共同配送を実現し、コンビニエンス・ストアの特性に応じた配送システムを確立していく。 加えて、魅力的な商品開発も重要な課題であった。

 

コンビニエンス・ストアは利便性を重視する業態のため、ファストフードの品揃えが重要となる。当初は、アメリカのセブン‐イレブンに学んでホットドッグなどの取り扱いを試みたが、うまくいかなかった。そこで鈴木は、おにぎりや弁当の開発に乗り出す。

 

周囲からは「そういうのは家でつくるのが常識だから売れるわけがない」との反対が寄せられたが(鈴木敏文『挑戦 我がロマン――私の履歴書』日経ビジネス人文庫、2014年)、米飯商品、調理パン、調理麺、惣菜などの商品開発は成功を収め、コンビニに欠かせない商品となった。

 

さらに、POSシステムを利用した単品管理は、在庫管理、商品納入、商品開発などを情報面から支える重要なポイントであった。

 

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本連載は、満薗勇氏の編著『消費者と日本経済の歴史 高度成長から社会運動、推し活ブームまで』(中央公論新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

消費者と日本経済の歴史 高度成長から社会運動、推し活ブームまで

消費者と日本経済の歴史 高度成長から社会運動、推し活ブームまで

満薗 勇

中央公論新社

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