前回は、ニーズに合わせた土地の「分筆」で高値売却を実現する方法について説明しました。今回は、売り物件の「情報コントロール」の重要性について見ていきます。

事業用地の売却で基本となるのは「更地」への加工

事業用地では会社の社屋や工場などが建てられているケースが多く見られます。これらの場合、買主は建物がなく平らな更地を好むので、事業用地の売却で基本となるのは更地への加工です。

 

建物の解体は専門の業者に依頼することになります。ここでも複数の業者と面談して話を聞き、見積もりをとってから契約する業者を選びます。話を聞くときのコツは工事の難しさを強調する解体業者はあまり信用しないことです。「基礎が深くまで入っているので、抜くのは非常に難しい工事になります」などと説明する業者がいますが、多くの場合は価格をつり上げるためのアピールにすぎません。

 

10社程度の話を聞いて、ほとんどの業者が「難しい工事」というのであれば信憑性がありますが、そうでない場合には聞き流しておくのが賢明です。

 

解体の見積もりは単純な原価法です。現場作業員の日給やパワーショベルオペレーターの日給などに工事に要する日数をかけ、さらに廃材の破棄に要する費用などを加算して算出します。

 

そのため業者ごとの差はそれほど出ないように思えますが、実際には同じ工事をするにもかかわらず、見積もりには大きな差があります。たとえばもっとも低い見積もりが5000万円なら、高い見積もりを出す業者は8000万円程度の価格を示すことも珍しくありません。

 

解体工事費は売却に要するコストの中では大きな割合を占めるので、なるべくたくさんの業者に連絡をとることが大切です。

「情報戦」に慣れていない中小経営者

買主はとにかく安値で不動産を買いたいと考えています。中には情報戦略でプレッシャーをかけてくる買主候補もいるので、それに負けない対応が必要です。

 

中小経営者の多くはM&Aなど情報戦で成否が決まる企業活動に慣れていません。大きな資金を持つ買主候補の中には、たとえばパチンコ業界など情報戦を日常的な業務としている組織も少なくないため、対応の必要があると最初から覚悟しておくべきです。

 

具体的には、事業に対する悪い噂を流されるなどです。「資金繰りが苦しいため倒産しそう」「廃業するらしい」「不動産を売るようだ」などの噂が流れると、金融機関や取引先、従業員などが動揺します。

 

そのような噂によって経営がさらにひっ迫すれば、さまざまな手配を整えてから廃業し、不動産を売却するといった時間的な余裕がなくなりかねません。時間的な余裕がなくなれば多くの買主候補と面談することができないため、競合状態を作り出すことが困難になります。買主候補にとっては不動産を安く購入できる可能性が高まりますので、それを狙って情報戦略を仕掛けてくるのです。

 

対策としてもっとも大切なのは、売主による情報のコントロールです。多くの買主候補と面談するほど情報は拡散しやすくなるので、「誰にどんな情報を告げるのか」や「その情報はどのように広がる可能性があるのか」を常に意識しながら売却の手続きを進めることが大切です。

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    本連載は、2016年8月16日刊行の書籍『経営者のための事業用不動産「超高値」売却術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

    経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

    大澤 義幸

    幻冬舎メディアコンサルティング

    事業が悪化し経営苦に陥った中小企業経営者の切り札「不動産売却」。できるだけ高値で売却して多額の負債を返済したいと考えながらも、実際は買手の〝言い値″で手放せざるを得ないケースが多い。しかし、売れないと思っていた…

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